第6航行 海洋学校の1日
午前6時、寮の至るところから起床ラッパの音が鳴り響く。
「う~………。」
入学してから相当経った筈だが、ギンガは未だに慣れない。
「ほら、ギン……起きろ。」
マガイロが無理やり起こす。
やっと重い身体を起こして、着替える。
その後、朝食を食べる前にやることがある。
戦艦港へ向かう。
そこに、生徒が一列に並んでいる。
やることとは、『海の女神に一礼をする事』。
海上の事故が無いよう、祈りを捧げる。
▪▪▪
登校時間 (午前8時半) までに朝食を済ませる。
学校の食堂や、近くのファストフード店で朝食を食べる。
ちなみに、食堂は学校と男女寮の間にある。
ギンガは、毎朝食堂のおにぎりを食べる。
「ギン、隣座るぞ。」
マガイロがパンとスープを乗せたお盆を持って、言った。
「おう。」
黙々と、朝ごはんを食べる。
「ギン、おにぎり好きなんだな。」
ふと、マガイロが言う。
「好き、と言うか……おにぎりじゃないと落ち着かない。」
幼い頃から、朝食と言えばおにぎりだった。
一時、パンやシリアルにしたときがあったが、何か違うと思った。
「………あ、あの。ギンガさんに、マガイロさん。」
同級生のアミリーが話しかけてきた。
「どうした?」
「シアラちゃん、見かけなかったかな。これ、寮の更衣室に置きっぱなしで、届けようと思ったの。」
『戦艦ノート』と書かれたノートを見せる。
確か、結構前から持っていたな、このノート。
「戦艦ノート?」
マガイロが不思議そうに言う。
アミリーから、ノートを受け取る。
ページをめくると、そこにはびっしりと戦艦の図と情報が載っている。
「僕も見たことが無かったが……これは凄いな。」
「……あっ、アミリーちゃん!それに、ギンガくん、マガイロくん。」
丁度、シアラがやって来た。
「ねえねえ、戦艦ノート見なかった!?」
どうやら探していたみたいだ。
「……それなら。」
「これだろ。アミリーが更衣室にあったって言っていたぞ。」
ギンガは持っていた戦艦ノートを渡す。
「あぁ~!ありがとう!失くしたって思って焦ったのよ!」
シアラはホッとため息をつく。
「なぁ、それって全部自分で書いたんだよな。……勝手に見てしまったのだが。」
マガイロが聞く。
「……あぁ、別に他の人に見せても大したものじゃないから、大丈夫、大丈夫。これね、自分で調べて書いたの。図も入れて3年かけて作り上げたものよ。」
「シアラちゃんって、意外とマニアックだよね。」
アミリーか挟む。
「ほ、本当?そうかなぁ。」
その時、時報鐘の音が聞こえた。
8時になった時の知らせだ。
「いっけね。話に夢中してたら、こんな時間だ。……急がないと。」
急いで朝ごはんの残りを食べて、席を立った。
▪▪▪
なんとか、登校時間ギリギリで学校内に入れた。
『お前たちー!急げー!』
玄関先には、風紀委員長のトドマ先輩が居る。
登校時間には結構厳しい。
まぁ、海軍の戦艦免許が取れる学校だし、本場の海軍の兵士が集合場所に遅れたら大問題だしな……。
荷物をロッカーに置き、教室へ向かう。
ホームルームが終わると、昼までは学科授業、午後は戦艦を使う授業がある。
1~3時限目までは、技術科と管理科の共同授業。
(戦艦の基礎や、戦術の勉強など。通年で学ぶ。)
4時限目は、技術科は技能訓練 (体力作りや、装填練習など。) 、管理科は機関室の模擬訓練を行う。
5時限目は、実際に戦艦を動かす。
入学式後の一週間、天候悪化以外、ほぼ毎日行う。
天候悪化時は、シミュレーターを使って練習をする。
▪▪▪
午前中の授業だが、一年生次は、海軍用語や戦艦の部位を学ぶ。
それが意外と厄介……。
週末には小テストがあり、皆は必死に覚える。
「ふへぇ…。戦艦なら余裕だけど、なかなか海軍用語が覚えられないのよね。」
授業の合間の休憩時間、ふとシアラが呟く。
「戦艦ノートみたいに、独自でノート作りしたら良いんじゃないか。……少なからず、僕はそうしているよ。」
ギンガはそう言う。
「えっ!?見せて、見せて?」
ギンガは、授業用じゃないノートを見せた。
「うわぁ、しっかりしているわ。」
シアラは感心する。
いや、シアラの戦艦ノートの方が凄いと思うのだが……まあいい。
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ようやく昼休憩の時間になった。
朝ごはんの時と同様、食堂かファストフード店で済ます。
「う、今日はやけに埋まっているな。」
マガイロは、ほぼ満席の食堂を見て言った。
「仕方がない。空いているところに、別々に食べようか。」
食券を買って、厨房の人に渡す。
ギンガとマガイロは、『本日のランダムメニュー』を選んだ。
運ばれたのは、カレーだった。
海鮮がたくさん入っているカレーだ。
空いている席を探した。
「……あの、隣いいですか?」
「おーよ、どうぞ。」
確か、二つ上の先輩だったような……。
違いは、胸に付いているバッジだ。
毎年、進級すると学年バッジが更新される。
「……確か、今年の入学生だっけ。」
その先輩がふと話しかけた。
「はい。2組のギンガと言います。」
「話しかけて済まないな。……僕は3年のリバーバだ。この学校には慣れたかい?」
「大分は……でも、朝は苦手です。特にラッパの音が。」
「確かにな。普段聞き慣れないから、そう思うのも無理はない。」
そのあと、二人は話ながらご飯を食べた。
「ごちそうさまでした。……お先、失礼するよ。午後も頑張ろうな。」
リバーバ先輩は、その場を離れた。
先輩だからと緊張していたが、そうでもなかったな。
僕も……こんな先輩になれるだろうか。
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午後は、いつもの通り戦艦の練習をした。
最初よりは、なかなかいい感じになったと思う。
放課後は、寮の門限までは自由行動になっている。
(門限は、午後8時。それまでには夕食も済ませる。)
過ごし方は、人それぞれだ。
……あ、宿題は特には無いらしい。だが、予習復習は欠かせない。
午後10時。就寝時間。
これが、普段の一日の生活。
門限とかは厳しいが、それ以外は特に不便とかは無い。
本当に、この学校を選んで良かったのかもな。
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