第4航行 戦艦見学
入学式の翌日、オリエンテーションとして戦艦見学をした。
「ふぁあ!アスマロス・ウバロガ戦艦……!こんな間近で見られるなんて!」
シアラは目を輝かせる。
「………なんか、生き生きしているな。」
マガイロはギンガに囁く。
「ああ、近くで見たいとかなり言っていたからな。」
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「手前から、A8型戦艦、F14型戦艦、C16型戦艦だ。一年生次で取り扱うのは、A型戦艦だ。」
シキハ先生が言う。
「あ、あの!先生!」
シアラは声を上げる。
「シアラ、どうした?」
「あの、前から気になっていたんですけど………確か、学校用の戦艦と、本場の戦艦との違いは大砲の大きさだと思うんです。それはどうしてでしょう?」
皆はキョトンとした。
誰もそんなことは思ってもいなかったからだ。
「それは安全面だ。学校用の大砲は、戦艦を多少壊す程度の大きさになっている。」
「それでも、破損が大きい時もありそう。」
生徒の中から、アミリーが呟く。
「まあ、一ヶ所に幾つも攻撃を受けるとそれなりに破損はするからな。」
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甲板から、A8型戦艦の中へ入った。
まず、司令塔へ向かった。
「思ったより広々してるな。」
マガイロはそう呟く。
「司令塔には、艦長、操行師、通信師、情報管理師 (※1) の計4人が搭乗する。船長と情報管理師は、上の学年が行う。」
シキハ先生が言う。
「………25人だから、少し搭乗出来ない人も出てくるのか。」
ギンガが言う。
「一応、練習には皆搭乗するが……規約だとその人数だから、仕方がない。」
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司令塔を出た。
次は大砲の説明らしい。
「大砲は、装填師、砲師の二人で行う。」
「でも、確かA8型戦艦の大砲って特殊だった気がする。学校用の大砲って、基本的に単砲なんだけど……主砲と副主砲が引っ付いているのよね。」
シアラが言う。
確かに、正面を向いている主砲の横に、砲幅が小さい大砲がある。
「シアラの言う通り、うちのA8型戦艦は特殊で……装填師2人、砲師1人の3人で撃つ。単砲より少し威力が高い。」
「どうして2つあるんだ?」
「威力を少し上げるためだ。25mm砲の隣に、10mm砲を付けている。」
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最後に、機関室を見た。
「うちの学校は、『重油自動給油型機』の改造型を使っている。」
聞き慣れない単語だ……。
「船底に重油が備蓄してあって、そこから巻き上げて動かすんだ。それを自動で管理するシステムが『重油自動給油型機』と言うものだ。」
「あの、改造型と言われる理由は?」
バイルが聞く。
「それは、元々アスーグレ・ウバロガ戦艦を改造したのが、アスマロス・ウバロガ戦艦でな。それに応じて、機関のシステムも改造したのだ。」
「ア、アスーグレ?何処の学校の戦艦だ?」
ギンガは、小声でシアラに聞いた。
「国立ウェストローガ海洋大学校 (※2) の戦艦よ。大きさに若干の違いはあるけど、ほぼ同じような造りになっているわ。」
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「以上で、戦艦の説明はおしまいだ。これから一週間、基礎的な勉強と体力作りを行ってから、戦艦を動かすぞ。」
「「はい!」」
皆は、教室へ戻って言った。
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(※1) 情報管理師
レーダー解析を行ったり、各戦艦の位置をまとめたりする。
(※2) 国立ウェストローガ海洋大学校
ミハローガ王国の国立海洋大学校。
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