第3航行 学校生活について
「皆、席着けー。」
担任のシキハ先生が、教室へ入ってきた。
生徒はぞろぞろと席へ着く。
「改めて、2組の担任のシキハ・ミチバルだ。よろしくな。」
皆は頷く。
「これから、このアスマロス海洋学校の生活について話していく。」
そう言うと、黒板に何か書き始める。
どうやら一年の流れみたいだ。
「1年生次は、まず基礎的な勉強、戦艦操作に慣れる所から入る。」
「あの、大会は出るのでしょう?」
シアラが聞いた。
『海軍戦略式技術大会』……毎年、2学期の半ばにやる大会だ。
三国の国立と私立の海洋学校、計12学校で技術を競う。
その後、国選抜の試合も行われるらしいが。
「慣れにもよるだろうが、出ると思った方がいい。この学校の戦艦の性能は、それほど悪いワケでは無いが………何にせよ生徒数が他の学校より少ない。」
皆の顔が強張る。
今年は極端な定員割れと言われていたが、上の2学年も4クラス (120人程) しか居ないとの事。
戦艦は、A型戦艦が25人、F型戦艦が30人、C型戦艦が35人で運用する事と決まっており、組み合わせで多少の変化はあるが………うちの学校は本当にギリギリのラインで運用することになるみたいだ。
「一応だが、1学期末には練習試合がある。それで、大会に出られるか見極めだ。」
「やれそうかしらね、私たち。」
シアラが、ギンガにそう呟く。
「皆の練習によるな。それに、航行指示に関しては上の学年を頼りにすればいい。」
シアラは眉をひそめる。
「貴方、あの海士に戦術を教えて貰っていたんじゃない?」
「それとこれとは話が違うぞ、シアラ。確かに教えて貰ってはいたが、今は先輩の指示に従うべきじゃないか?」
そうね、と言わんばかりにシアラは頷いた。
▪▪▪
「………と言うわけで、本年度の授業を含めた学校生活の説明は以上だ。これから教科書などの受け取りを行う。皆、講堂へ移動するぞ。」
皆は、移動をし始めた。
「これからの生活、本当に楽しみねぇー。」
移動中、シアラが話しかける。
「さっきはルームメートが居ないと嘆いていたのにな。」
ちょっとからかってみる。
「もぉ、酷いわその言い方。この学校で初めての友達ができたから、いいの。」
「あはは。そうだね。」
「二人、本当に仲良しだね。俺は学校の同級生すら居ないから羨ましい。」
マガイロがそう呟く。
「そうなの?」
「ああ。俺は元々、この地方のかなり内陸側に住んでいてな。みんな他の学校に行っちまった。海洋学校に入ろうと思ったのは俺だけだったらしい。」
「そう言えば、ギンガくんも元々首都のメンデラスに住んでたよね。」
シアラが思い出すように言う。
「………あ、ごめん。この話、確か………」
「………その話はするな。………先に行くぞ。」
ギンガは嫌そうな顔をしたと思うと、そそくさと行ってしまう。
「おい、ギン!」
ギンガは、振り向かずにそのまま行ってしまった。
「ごめん、当分はそのままにしといて。……でね、彼とは小学校からの同級生って言ったけど、実は転校生だったの。メンデラスから転校ってのは、当時の先生から聞いてね。」
「メンデラスの時の話をすると、いつもあんな感じになるのか?」
マガイロはそう言うと、シアラは頷く。
「つい、言ってしまったけれど……その話をすると嫌そうな顔をしてね。何か事情があるみたい。」
▪▪▪
「マガ、さっきはごめんな。急に行ってしまって。」
寮に戻ったあと、ギンガはマガイロに謝った。
「いや、別に大丈夫だ。……けどな。」
「……ん?」
「あの雰囲気で何かあったのは分かる………でも、いずれ話してくれ。俺はお前の支えになりたい。」
「………分かった、ありがとう。」
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