第45.5航行 筆記試験の合格祝賀会
合格が発表された、その日の夜。
体育館で、合格祝賀会が行われた。
学食で作られた料理に加え、近隣の食堂の人達も提供をしてくれた。
「バイキング方法で、食事を分けあってくださーい。」
学食長である、ホリーさんそう言う。
皆、それぞれに取り合う。
(……皆、合格出来て良かったな)
バーモントはそう思う。
(ただ、な)
心残りなのは、この場にミミナが居ない事。
合格したことは胸を張れるが、やっぱりミミナと一緒に――
「浮かない顔しているよ、バーモント君。……もしかして、まだミミナちゃんの事が心残りなの?」
サクラが話しかける。
「……ああ。」
「そんなに浮かない顔をしてたら、ミミナちゃんに怒られるわよ。」
「そうだな。」
いつまでも、ミミナが居ない事を嘆いていても仕方がない。
今は、将来に向けて歩むだけだ。
▪▪▪
食事が、皆に行き届く。
「……皆、準備はいいか?」
バーモントが言う。
「「いいでーす!」」
他全員は、一斉に飲み物が入ったコップを上げる。
「では!合格記念に……乾杯!」
「「かんぱーい!」」
▫▫▫
「チャロンテ (牛のトマト煮込み) 美味しいなぁ。まさか此処で食べられるとはね~。」
チオが言う。
「チャロンテって、確かネンテ町の郷土料理だったよね。」
サクラが言うと、チオは頷く。
(ネンテ町は、リハマ市の内陸部にある統合された町の1つ)
「お母さんがネンテ町の出身でさ、たまに作ってくれたのよ。最近、全然食べれてなかったから……懐かしくなっちゃって。」
▫▫▫
「……おい、そんなに食べ物を取ってどうするんだ。」
リバーバは、アミナに話しかける。
「え、全部食べるつもりよぉ?」
アミナの前には中皿が6枚あるが、そこに山盛りに食べ物がある。
「……は?全部食べる?それ、一体何人前なんだ。」
「えー、分からないわ。でも美味しいそうだから食べれそうよ。ほら、色々言わないでさぁ、料理が冷めちゃうわよ。」
そう言うと、アミナは食べ始めた。
「アミナって、意外と大食いなのかもしれない……」
▫▫▫
バーモントは、ミミナの写真が置かれている棚の前に、取り分けた食べ物を置いた。
「……食べてな、ミミナ。」
バーモントはそう呟く。
写真は、ミミナが生徒会長になった時に記念に撮ったものだ。
航行服を身にまとい、生徒会長のバッチを付けている。
笑顔で敬礼している姿を撮りたいと言って、撮った事も思い出した。
その瞬間、涙が溢れたのが分かった。
やっぱり、俺はミミナと共に歩みたかった。
海軍になってお国を守る人にと、一緒になりたかった。
その気持ちは、どうしても隠せなかった。
『折角の祝賀会なのに、そんな浮かない顔をしないでよね……もう、バーモント君ってば』
「……すまないな、ミミナ。」
▪▪▪
祝賀会は、盛況で終わった。
提供された食事も、全部食べ終わった。
「はあー。お腹いっぱいだわ。」
机の片付けをしながら、アミナが言った。
「アミナちゃんって、あんなに大食いだったなんてね。」
チオが呟くと、周りに居た人は頷いた。
あれから、もう3皿ほど同じ量を食べたのだ。
……流石に、あの時も周りの人は引いていたが。
「でもさ、こうして皆と食べるのも残り少ないって思うと……寂しいね。」
そう、サクラが言った。
卒業して、海軍に入隊するとそれぞれ違う基地に配属される。
サクラがそう言うのも、頷ける。
「卒業は、もうすぐそこのか。」
バーモントは呟く。
今年度は、本当に色々あった。
でも、どれも思い出だ。
………別れと旅立ちは、もうすぐそこに迫っていた。
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