第41.5航行 バーモント、セィレッタ少佐の所へ赴く
『試し』が行われてから、4日後。
バーモントは、セィレッタ少佐の所へ赴いた。
「卒業前に、一度お話がしたい」と伝えたところ、時間を作って頂いたのだ。
ニーシッタ海軍基地に着くと、門前にチルネ大尉が出迎えてくれた。
「お待たせ致しました。」
そうバーモントが言うと、チルネ大尉は頷いた。
「それでは、軍部棟の方へ行きましょうぞ。」
軍関係者の門から、基地の内部に入る。
(やっぱり、本物の海軍基地の戦艦港って凄いな……)
軍部棟へ向かう途中、バーモントはそう思った。
学校の戦艦港よりも広く、大きな戦艦が並んでいる。
「やはり、戦艦の方へ目が行きますかの。」
ふと、チルネ大尉はそう言った。
「……あ、はい。」
「海洋学校の戦艦よりも、数多くの戦艦を扱っているからな。……目移りするのも、無理はない。」
軍部棟への中へ入る。
軍人の方々が、行き来している。
『第七部隊 会議室』と書かれた部屋に案内された。
「セィレッタ少佐、チルネです。バーモント殿を連れて参りました。」
ドアの前で、チルネ大尉が言うと『入って構わんよ』と中から声がした。
「失礼します。」
二人は、部屋に入った。
中には、沢山の資料が入っている棚があり、真ん中には囲みの机と椅子がある。
奥の方に、セィレッタ少佐が座っていた。
「……さて、向かいの方に座って良いぞ。」
セィレッタ少佐が言う。
「失礼します。」
バーモントは、席に着いた。
「それでは、私はここまでということで……」
チルネ大尉が言った。
「案内、ありがとう。」
セィレッタ少佐がそう声をかけると、チルネ大尉は会釈をして部屋を出た。
▪▪▪
「お忙しいところ、時間を作って頂いて……ありがとうございます。」
バーモントがそう言うと、セィレッタ少佐は微笑みながら首を横に降った。
「何のこれしき。来るといいと言ったのは、こちらの方だ。……それでは、話を聞こう。」
「それでは、お聞きします。自分は、代理の隊長として学校の皆を率いて来ました。先ほどの『試し』でもそうですが、未だに周りや後輩の意見を聞きながら、指示を統括する事しか出来ていない、そう思うのです。自分自身の判断力が足りない、とでも言いましょうか……どうしたら、意思を強く持って行動が出来るか、その旨をお聞きしたいと思っています。」
代理でやっていた面があり、どうしても自分自身で考える力が足りない。
……ある意味、他力本願のような気がしてならない、と。
本場の軍人は、そこら辺の意識はどうしているか、聞きたかったのだ。
セィレッタ少佐は、少し考える。
「……少なからず、周りの意見を聞く事や取り入れる事は、軍を動かす上で在ることだ。階級が上になるほど判断が迫られるのは確かだが、人の意見を取り入れないと言うものは、統括を崩しかねないと考える。軍人の『判断力』、それは『自分自身の決断』では無く、『情報を咄嗟にまとめて行動に移す思考』だ。」
「つまり、自分のやり方はあながち間違ってはいない、と。」
そうバーモントが呟くと、セィレッタ少佐は頷いた。
「戦場にて、そのまま攻撃を続けるか、撤退するか。それは置かれている状況と、周りの意見を取り入れた上で判断をする。それが出来れば、良き軍人になれると思っている。ただ、判断を誤ると……下手をすれば、最悪の事態を招きかねない。生と死は一重だが、出来れば被害は最小限に食い止める。それも上の階級の役目だからな。」
バーモントは、自分が今までにやっていたやり方で良いのか気になっていた。
……のだが、セィレッタ少佐の言葉で、引っ掛かっていた事が解消された。
「『試し』の時と、顔つきが違う。引っ掛かりが無くなったようだな。」
「……はい!」
その時、ドアを叩く音がした。
『少佐、そろそろ軍会議のお時間です。』
「すまない、もう時間のようだな。」
セィレッタ少佐は、そう言う。
「こちらこそ、貴重なお時間をありがとうございました。」
バーモントは、お礼を言った。
セィレッタ少佐は、「また来るといい」と言った。
「失礼しました。」
バーモントは、部屋を出た。
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チルネ大尉に、また門まで送って貰った。
「良き話、出来ましたかな?」
そう、チルネ大尉に言われた。
「はい。……チルネ大尉も、わざわざ出迎えをして頂いて、ありがとうございました。」
「いやはや、言うほどの事はしていない。また、何かあれば連絡を。」
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その後、バーモントはこのご縁でセィレッタ第七部隊に入る事となる。
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