第41航行 3年生、本場海軍との試練です:後編
『試し』が開始されて、45分は過ぎただろうか。
バーモント率いるF型戦艦1号は、4号と共に東南方面に操行していた。
『あれ、相手戦艦?』
甲板監視師からの報告だ。
「4隻、並んで操行しているみたいね。」
アツミがそう言う。
「リバーバ、聞こえるか。」
4号の艦長として搭乗している、リバーバに声をかける。
『おう。目の前に敵船だろ?』
「なんとか食い止めて、残り2隻も合流させよう。」
『だったら、水柱撹乱を行い、両側から縫って攻撃した方が良さげだな。』
「残り2隻、エンジン最大出力を行うと約4分程で来れるみたい。」
通信師のズニアが横から言う。
「即座の連絡と報告、ありがとう。……リバーバ、その方法で食い止めよう。」
『了解した!』
▪▪▪
『目の前に、敵船2隻発見。』
監視員からの報告を得た。
「攻撃はいかがしましょう。」
通信員の、ボルネチア大尉が言う。
「あの感じ、撹乱技術を用いて食い止めるな。射程距離はこちらの方が有利。圏内に入る寸前で、先に撃とう。」
セィレッタ少佐はそう返す。
「主砲、装填準備!」
『装填完了。』
『こちら、機関室。速度はどうしましょう。』
機関室から、そう無線が入る。
「そのままで良い。このまま、正々堂々と!」
射程圏に入る。
「主砲、発砲許可。敵に向かって撃て!」
▪▪▪
「………っ!?」
バーモントの目の前に、水柱が昇った。
『多分、相手にこちらの戦術を気付かれたんじゃないか?』
バーモントがそう伝える。
(くそ、どうしろって……)
「バーモント君、このまま突っ込めんの!?そうじゃなきゃ、やられるだけよ!」
アツミが言う。
「………そうだな。シェル!砲弾を避けながら、操行してくれ!」
操行師のシェルにそう伝える。
「了解。」
「リバーバ、このまま突っ込んで攻撃するぞ!」
『了解!』
「主砲、相手戦艦に当てるぞ。」
『分かりました。』
(何とか、この場を凌げ……)
▪▪▪
「おや?避けながら、こっちに向かいますね。」
レーダー員のリーシッダ中尉が言う。
「これは、命知らずの行為に見えますな。」
ボルネチア大尉が横から言う。
「………魚雷を、向けよう。3号は、もう1隻を頼む。」
『3号、了解。』
▫▫▫
バーモント達が、相手戦艦を抜けようとした瞬間。
乗っていた戦艦に、衝撃が走る。
『[エラーコード02]……操行停止。』
機関室からの報告だ。
「リバーバ、そっちは大丈夫か。」
『こっちも、攻撃が当たって停まった。』
その時、『試し』の終了との無線が入った。
「…………終わり、か。」
▪▪▪
「『試し』、お疲れ様でした。」
バーモントが、言った。
「お疲れ様、でしたぞ。」
「では、今回の評価はどうでしたか?」
アガミ先生が、そう聞く。
「少し、戦術が見えやすかったのと、あの場面では突貫よりも逃げる事も大事だ。……まだまだ、伸び代はある。この経験を生かせれば、もっと良くなるぞ。」
セィレッタ少佐は、そう伝える。
「……あ、ありがとうございます。」
「バーモント殿、何か気に引っ掛かっているようだな。」
バーモントは図星を言われて、ちょっと焦った。
「は、はい。色々と。」
「………面白い。『試し』を行って、何かを感じたのは良い事だ。いつでも、私の所に来なさい。教えられる事は、教えてあげよう。」
その時、バーモントは恩師に出会えたと思った。
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