第37航行 大会後のお話
「さて、お二人に伺います。今回の大会で優勝出来た、勝因はなんでしょう。」
バーモントとイチカは、新聞記者からの取材を受けていた。
「勝因、ですか……。個々の判断力、ですかね。」
バーモントが、そう言った。
「『個々の判断力』ですか。具体的には?」
「A型戦艦が、相手の戦艦を操行不能にして隙を作ってくれました。」
「最初のグレンドー国戦ですね。」
記者がそう言うと、バーモントは頷いた。
「はい。……それと。」
イチカの方を向いた。
「両方のC型戦艦を落としてくれたのは、イチカさんの判断がありましたから。」
「わ、私はただ……咄嗟の判断で。」
イチカは少し慌てたように言う。
「それでも、撃破出来るのは相当な事ですよね。何か、特別な事を試合前にしたのですか?」
記者は、イチカに聞く。
「……戦艦の構造と過去の試合を観て、戦術を考えたりしました。」
「なるほど。では……」
こうして、いくつか質問に答えた。
「……お二人とも、ありがとうございました。特集は後日掲載となりますので、出来上がり次第掲載日を伝えします。」
二人は頷いた。
「それでは、改めて優勝おめでとうございます。……それでは。」
記者は、後にした。
▪▪▪
「二人、ちょっといいか?」
アガミ先生に、呼び止められた。
「なんでしょう。」
イチカが聞く。
「校長からなんだが……海軍のジェラスダー・ファンノー中尉が、学校に来ているんだ。それと、リハマ市のイード市長も来ている。話があるって、取材を待っていたんだ。」
急いで、職員会議室へと向かう。
「お待たせしました。」
三人が入ると、ジェラスダー中尉、イード市長は会釈した。
コモンド校長が、席へ座るように手をかざす。
「……さて、話と言いますのは。」
イード市長が口を開く。
「私の叔父であるバロ・ファンノーより、学校に改造型戦艦の費用を出したい……そう願いを伝えよと、仰っていましてな。」
そうジェラスダー中尉が言うと、紙1枚を懐から出して机に置いた。
そこの紙には、『戦艦費用として7000億ツアンを寄付する。バロ・ファンノー』と書かれていた。
金額を見た瞬間、そこに居た皆は驚いた。
「7000億!?戦艦2隻造れる大金を、私達の学校にだなんて。」
イチカは、そう言う。
「でも、どうしてあの『叩き上げの戦士』と呼ばれたバロ殿が、寄付を?」
コモンド校長が聞く。
「そちらに、叔父とかつて交流があった少年が通っている……と聞きましてな。」
「……もしかして。」
「何か、知っているのか?」
アガミ先生は、バーモントに聞く。
「ギンガ君かもしれません。前に、聞いたことがあるんです。かつて、戦術を教えて貰った恩師が居ると。……その恩師がって思って。」
「……そうか、ミッゼルガー中尉の子か。アツギの姓に聞き覚えがあるのは、そう言うことか。」
事情を悟ったコモンド校長が、そう呟いた。
「寄付でよろしいですな。」
ジェラスダー中尉がそう言うと、皆は頷いた。
「では、戦艦の設計図が出来上がりましたら……私の所まで郵送をお願いします。」
▪▪▪
その日のうちに、バロ・ファンノーから7000億ツアンの寄付があった事が全校に伝わった。
「まさか、あのバロさんが寄付だなんてね。」
シアラは、そうギンガに言った。
「……僕も驚いたよ。まさかね。」
「でも、良かったな。資金を集めなくて。」
マガイロが言う。
「資金を集める?」
シアラは聞く。
「あ、いや……何でもない。こっちの話さ。」
マガイロが、そう返す。
シアラは怪訝そうな顔をしたが、頷いた。
▪▪▪
ギンガは、バロが試合を観てくれたと思った
どこかで、きちんとお礼がしたい。
「ありがとう」、と。
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