第36航行 国別対抗大会終了
大会の閉会式が始まった。
『これより、第78回国別対抗海軍戦略式技術大会の閉会式を執り行いたいと思います。まず、優勝旗授与。』
バーモントが優勝旗を受け取った。
『続きまして、今大会の優秀選手の発表を行います。……優秀選手は、アスマロス海洋学校2年、イチカ・シファランさん!』
「わ、私……っ!」
イチカは驚いたが、嬉しい気持ちもあった。
自分の判断が選ばれた理由なのかな、そう思った。
コールの中、イチカは壇上に上がり賞状を受け取った。
「「おめでとう!!」」
周りの生徒から、そう言われた。
「ありがとう。優秀選手になれたのは、私を支えてくれた……皆のお陰!」
拍手が起こった。
『では最後に、アチェガラス大佐よりお言葉を。』
アチェガラス大佐が、壇上へ上がる。
『国を背負いし、今大会に挑んだ諸君!誇りと胸に、今後も鍛練を怠らぬように!』
「「はい!」」
『ありがとうございました。これにて、第78回国別対抗海軍戦略式技術大会を終了いたします。皆様、お疲れ様でした。』
拍手が沸き起こった。
これで、国別対抗の大会は終わった。
▪▪▪
戦艦に乗って、学校へ帰る途中の事。
「……ねぇ、ギンガ君。」
イチカは、ギンガに話しかけた。
「何でしょう、先輩。」
「C型戦艦へ向かう局面でさ、私に無線をくれたよね。あれ、どうしてなのかなって。」
ルゥイベットロ王国戦での、あの局面の事だ。
気になっていたから、聞いてみたのだ。
「必死に考えている先輩の姿が見えた時、いてもたってもいられなくて。……で、学校のC型戦艦は試合の前にシアラから聞いたんで、それで咄嗟に。」
咄嗟に、と言っているが……砲弾が当たりやすい場所を捉えるのは凄い事だ。
それを伝えると、ギンガは少し照れくさそうにした。
「こういうのは、僕の師匠に鍛えられたので。」
▫▫▫
「………」
ニアンは、遠目からイチカとギンガが話しているところを見ていた。
「せーんぱい。」
シアラが話しかけた。
「行かなくても良いんですか?イチカ先輩のとこ。」
「……ああ、ギンガくんとなんか話しているようだし。邪魔は良くないと思ってな。」
成る程、と言わんばかりにシアラは頷いた。
「そう言えば、ちょっと前にイチカ先輩から聞きましたよ。『シアラちゃんに励ましの言葉を言ったのに、私には直接言わなかったのよ』って。」
ふと、シアラがそう言った。
「たく、イチカのヤツは。余計な事を……」
シアラは、ニアンの顔を覗き込む。
「どうして、私には伝えられたんですか?」
「……そ、それはだな。イチカには、め……面と向かって話すのが……は、恥ずかしいから……」
「んもぅ!ニアン先輩は、イチカ先輩のパートナーでしょ。しっかりしなきゃ!」
シアラは、ニアンの肩を叩く。
(……もう少し素直に、イチカと話す機会を設けるか)
シアラに言われたニアンは、そう思った。
▪▪▪
―――その頃。
「叔父殿、お呼びでしょうか。」
甥である、ジェラスダー・ファンノー中尉がバロの所に来た。
「おう、ジェラスダーか。……実は、頼みたい事があってな。」
「頼み、とは何でしょう?」
「わしが貯めた財産の半分を、アスマロス海洋学校への改造型に充てよう……そう思ってな。市長と校長にそう伝えてくれんか、ちゅう話じゃ。」
ジェラスダーは、眉をひそめた。
「財産を、改造型の戦艦に使うのですか?」
「わしゃあ、もう余命は幾ばくも無い。いずれは使わんと、と思ってな。」
「確か、アスマロス海洋学校は先ほどの国別対抗大会にて主軸校としてまとめていましたな。」
ジェラスダーがそう言うと、バロは頷いた。
「あの学校には、基礎型しか無いと聞いておる。……なにかと不便じゃろうから、どうか話を通して貰えんかの。」
「分かりました。話をしてみますが、それ以外にも何か理由があるのでは?叔父殿。」
「……あそこには、かつての教え子であるミッゼルガーの子が居るんじゃ。だから、という理由もある。」
……ミッゼルガー・アツギ中尉。ギンガの父であり、叔父のかつての教え子。
教え子は大切にする、という心構えがある。
それを聞いたジェラスダーは、叔父らしいと思った。
「では、明日にでも話をしてみます。着工まで少し時間がかかると思いますが……それでもよろしいでしょうか、叔父殿。」
そうジェラスダーが言うと、バロは頷いた。
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