第32航行 大会記録(国別対抗編):序章
国別対抗の大会当日になった。
(開催国は、学校毎同じくグレンドー国である)
アスマロス海洋学校の生徒は、学校に残した戦艦を見る為に残った管理科以外の生徒が赴いた。
試合は、1日に1組で行われる。
なのだが、天候悪化も考えて5日間の日程が組まれている。
▪▪▪
「私達、生徒一同は――」
自陣地の一角で、イチカが紙に書かれている言葉を読んでいた。
今回の選手宣誓に選ばれた為、噛まないようにと練習していた。
「おい、イチカー。」
ニアンが声をかける。
「キャーッ!き、急に、声をかけないでよっ!驚くじゃない!」
「す、すまん。……とりあえず、アガミ先生が呼んでいたぞ。」
「……あ、うん。」
イチカは、アガミ先生の所へ向かう。
「先生、お呼びでしょうか。」
「ああ、イチカか。選手宣誓の件だが、無理を言って悪かったな。」
本来は、開催国であるグレンドー国から宣誓をする予定だった。
……のだが、向こうの事情で宣誓を降りたのだ。
「大丈夫ですけど……それがどうかしたんですか?」
「事情ってのが分かったのだ。……どうやら、宣誓をする予定だった向こうの副官が変わったらしくてな。」
副官が変わった?
どういう事だろう。
「ビラベ兄弟の事、分かるよな。」
「ああ、あの……」
「弟が、特例で副官になったのが理由らしい。」
ビラベ家はグレンドー国の軍人の家系。
その関係で、副官にするように頼んだらしい。
ルール的にどうかと思うが、顔を立てるために断る事は出来なかったみたいだ。
「何でもあり、ですね……」
イチカがそう呟いた。
「……ともかく、だ。頼んだぞ。」
▪▪▪
開会式が始まった。
『これより、第78回国別対抗海軍戦略式技術大会の開会式を行います。始めに、大会会長のアチェガラス大佐よりご挨拶。』
『国の名を背負った選ばれし皆さん。代表に選ばれたからには、恥じぬよう全力で遂行するように。』
『ありがとうございます。次に優勝旗の返還。』
カウラベット海洋学校の司令官である、ネシラが壇上へ上がって返還した。
『最後に、選手宣誓。』
イチカが壇上へ上る。
「私達、生徒一同は……全力で試合に挑みます!」
『それでは、大会を開催します。』
歓声があがった。
これで、国別対抗の試合が始まった。
▪▪▪
「緊張した……」
開会式後、陣地へ戻ったイチカがそう呟いた。
「先輩。」
この声は、ギンガだ。
「ギンガ君?どうしたの。」
何か頼みたいような顔をしている。
「……あの、先輩が乗るF型に乗せて貰えませんか?」
まさかのお願いだった。
彼から私に頼むだなんて。
「僕、先輩の力になりたいです。……駄目、でしょうか。」
もしかして、練習試合の時のお返しなのかな。
……断る理由、なんて無いね。
「もちろん!サポート頼んだよ、ギンガ君。」
▪▪▪
「坊主達の試合を観るなんて、なぁ。」
会場に、バロが来ていた。
軍関係から手を引いて以来、こうして試合を観るのは久しぶりであった。
「……っ!?バロ殿!」
大会審査員の一人である、グレンドー国のスズラ少尉が気がついた。
他国の現役軍人でも、バロの存在は知っている。
「いらっしゃるのであれば、声をかけてくれれば特別席に案内をしましたのに。」
「もう、軍から離れて何年じゃと思っとる。」
「ですが……」
「もう、一般人じゃよ。そこまでの配慮は要らんぞ。」
それ以上は言えない、と思ったスズラ少尉は身を引いた。
会釈をして、その場を離れた。
「試合、楽しみじゃぞ。」
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