第31航行 国別対抗の大会直前
いよいよ、国別対抗の大会が1週間後に迫った。
大会のフォーメーションの確認の為、各校の戦艦がアスマロス海洋学校へ集まった。
今回のA型戦艦は、2年が扱う事になった為……1年は見学という形で高台に居た。
「まさか、私たちが主軸校だなんてね。」
戦艦を見下ろしながら、シアラがそう言った。
「……そうだね。うちの学校も有名になればいいな。」
ギンガは返した。
「そうねー。」
そうシアラが言った。
これで、優勝出来れば……学校に新入生が集まるのかな。
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「試合を指揮する、総司令官バーモントと言います。よろしくお願いします。」
バーモントがそう言うと、皆は頷いた。
「副官のシアラと言います。これから、フォーメーションと、無線の通信確認をします。無線が聞こえ辛い場合は、お気遣い無く申し出てください。」
イチカが追加で言った。
フォーメーションでは、攻撃連携が上手く出きるか、味方のC型戦艦を守れるかなどを確認する。
アスマロスの他の戦艦を敵船に見立てて行う。
無線の通信は、学校毎に違う周波数を割り当てている。
国別対抗では主軸校へ周波数を合わせる為、どうしてもノイズが発生してしまう。
確実に通信を行う為、対抗戦の前に確認を行う。
試合に出る全戦艦で行う。
その為、練習は2日間かけてやる事になっている。
「それでは、皆さん。よろしくお願いします。」
バーモントの掛け声で、練習が始まった。
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練習は、思いの外捗った。
事前の打ち合わせ通りに動いてくれている。
無線の通信も、落ちたりノイズ発生も無くいい感じで終わった。
「1日目の練習、お疲れ様でした。」
バーモントが言った。
「「お疲れ様でした!」」
「練習、いかがでしたか?何か不具合とかありませんでしたか。」
シアラがそう言う。
「特にコレ、と言う程はありませんね。」
ノーラが言った。それを聞いて、皆は頷く。
「…………そう、ですか。」
「イチカさん、何か感じた事があるのか?」
バーモントは、イチカの表情を見てそう言った。
何か練習でやりたい事があるような、そんな感じに見えた。
「……あ、いや。その……」
イチカは躊躇う。
「さっきの練習で感じた事があるなら、今言った方がいいぞ。改善点があるなら、考え直すのもある。」
「明日の練習、大会布陣用の戦艦を二手に分かれて対峙したり出来ないかな、と思いまして。私達の戦艦では、基礎型しか無いのでどうしても攻撃の幅が狭まります。それに、本番では個々の判断にも委ねる部分があります。何でも指示通りにって訳にも行かないと思うので……臨機応変にやってみたいのです。」
イチカが、そう返した。
「成る程、その手もあるか。なら、無線の周波数確認を行ったらやってみよう。ただ、誤解を起こすから……フォーメーションの確認時だけ、無線はアスマロスの予備用 (周波数が少し違う) を積んでだがな。」
イチカは目を見開いた。
「良いんです……か?」
「俺は、少なからず良い練習案だと思うんだ。皆はどうかな?」
反対の意見は、出なかった。
「じゃあ、決まりだな。……それでは、また明日に向けてゆっくりと休んでください。」
こうして、練習が終わって一時解散となった。
「さてと、俺らも片付けようか。」
「あの、バーモント先輩。」
動こうとした時、イチカに呼び止められた。
「どうした?」
「意見を通してくれてありがとうございました。」
「お礼を言うのは俺の方だ。考えを言ってくれてありがとう。……明日の練習も、頑張ろうな。」
そう言って、バーモントはイチカの肩を叩いた。
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2日間の練習を通して、いよいよ国別対抗の技術大会を迎える事となった。
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