第30航行 主軸校への想い:ニアン編
副官に選ばれたイチカを支えるため、ニアンは試合までに自分が出来る事を考えた。
……と、考えてみたが何が出来るだろう。全然思い付かない。
とりあえず、本人に聞いてみよう。
イチカを引き止めて思った事を言ってみた。
イチカは少し考えて、
「過去の大会を一緒に観て、戦術を考えて欲しいな。」
と、言ってきた。
「過去のって、役に立つ……のか?」
と、聞いてみた。
「まぁ、参考程度にね。色んなフォーメーションがあると思うし。」
毎年、戦艦の配置は違いはある。
……だが、戦術の発見は出来るかもしれない。
「確か、シアラさん……大会記録のDVDも持っているって話を聞いたよ。」
シアラがそう言った。
「じゃあ、俺から貸し出せるか聞いてみるよ。」
「うん。お願いね。」
▪▪▪
翌日。
ニアンは、1年生の教室へ向かった。
「……あ、ニアン先輩。」
ちょうど、シアラが声をかけた。
「ちょうど良かった。1つ聞きたい事があるんだ。」
「何でしょう?」
「大会記録のDVDを持っているって、聞いて。貸して貰えるかと。」
「はい、私ので良ければ。……放課後、食堂でお渡ししますね。」
ニアンは頷いた。
その日の放課後。
食堂へ行くと、シアラがカウンター席で待っていた。
「お待たせ。」
そう声をかけると、シアラは頷いた。
「今年の主軸校に合わせて選びました。その方が戦術が練りやすいと思いまして。」
確か、今年はグレンドー国がスルエントロ海洋大学校、ルゥイベットロ王国はカウラベット海洋学校だっけ。
そこまで合わせて選ぶとは、流石と思った。
「わざわざ、ありがとう。」
そう言うと、シアラは頷いた。
「あの、先輩。」
ふと、シアラが言った。
その時の表情は、少し浮かないような顔をしている。
「どうした?」
「その、主軸校に選ばれるなんて思わなかったので。私達で良いのかなって――」
「あのな、俺達が選ばれたのは……ギンガ君とシアラさんのお陰だ。」
「えっ……?」
シアラが目を見開く。
「少なくとも、二人が居なかったらこんな主軸校なんて選ばれなかった。……本当に、そこは感謝しているんだ。」
「でも、勝利しても優勝とかしてませんし――」
ニアンは、シアラの肩を叩いた。
「技術大会の試合は、勝ち負けだけの話ではない。……本来は、軍人としての意識を試す為にあるモノと考える。それがあると認められたから、選ばれたんだ。」
これは、バーモント先輩から聞いた話だ。
選ばれたのは、『軍人としての意識』があると。
「それとな。不安なのは、皆同じだ。そればっかり気にしてると前へ進めない。だから、不安や心配を糧に進むことも必要だ。」
そう言って、イチカの事を思い出した。
……不安げな表情が、イチカと重なったからだ。
「……そう、ですよね……」
シアラの表情が和らいだように見えた。
「心配かけました。……前を向いて、頑張ってみます。」
▪▪▪
その足で、イチカにDVDを渡した。
それと、さっきの会話を話した。
「ふふ、ニアン君ってたまにいいこと言うのねぇ。」
「たまにって、言い方酷くないか。」
「私も、そんなこと言われたかったのになぁ。」
イチカはそう呟いた。
「そ、そんな……面と向かって言うなんて恥ずかしいじゃないか――」
「大丈夫、ニアン君の気持ちはもう受け取っているからさ。お互いに頑張ろうね。」
俺は、イチカと共に……試合に打ち込もう。
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