第24航行 大会記録:スルエントロ海洋大学校編
「これより、スルエントロ海洋大学校対、アスマロス海洋学校の試合を行います。生徒、礼!」
「「お願いします!」」
戦艦に乗り込む。
「今回は、C型の護衛は3隻。A型3隻及び、残りのF型は随時相手方の戦艦を探してください。見つけ次第、総攻撃をお願いします。……よろしくお願いします。」
ギンガはそう伝える。
『『了解!』』
「では、皆さん……頑張りましょう。」
▪▪▪
試合を開始してから、約1時間半。
『隊長、相手方の戦艦を発見しました!これから攻撃を行います。』
スルエントロ海洋大学校のC型戦艦に、F型の報告が入った。
「了解したわ。……後はよろしく。」
▪▪▪
その頃、アスマロス海洋学校側は……。
(まだ、相手の戦艦は見つかっていない……)
ギンガは監視をしながら、そう思っていた。
そろそろ見つかってもおかしくはない。
あと30分で見つかれば……!
その時、弾が着弾した音が聞こえた。
発射音は後方からだ。
その方向を双眼鏡で覗く。
3隻の戦艦が見えるが……違和感を感じた。
F13型戦艦は、前方に主砲は2つ付いている。
見える戦艦は、正面に3つの主砲台と、副砲台が1つ……。
あれは、F14型戦艦の改造型……!
「……後方に敵戦艦発見!だが、あれはF13じゃない、F14の改造型だっ!」
ギンガはそう報告を入れる。
『何だって!?』
バーモントの声だ。
「このまま、速度を上げて突貫!狙い打ちされる前に逃げ切ってください!シアラはフリー走行中のF型2隻に、C型の護衛に向かわせるよう頼んで!」
『わ、分かった。』
シアラは不安そうな声で返事をした。
今は、少しでもC型戦艦が標的にならないようにするしかない。
太刀打ちは出来なくも無いが……超攻撃型のF14改造型には、狙われると厄介だ。
『……おかしいわ、レーダーはF13を指している。』
情報管理師のアミナが無線で伝えた。
なぜあのF14改造型は、レーダーはF13を指しているのか。
……昨日の、ベルアンテの言葉を思い出した。
「情報に、流されないように」
まさか、シアラが戦艦の情報を得るのを見越して、レーダーを変えて戦艦をすり替えた?
……この状況下なら、そう思わざるを得ない。
『船先前方、敵の戦艦だ!2隻だが、あれもF14!』
もう1隻のF型から情報が入る。
前方を見ると、進行方向左側に2隻見える。
「前を操行しているF型1号は、前の2隻を引き付けてください。その間に……」
そう言った瞬間、乗っているF型戦艦に衝撃が走る。
砲撃を喰らった。
(不味い、狙われる!)
何とか踏み留まったあと、C型戦艦の方を見た。
相手のF型に囲まれているのが分かった。
それを見た瞬間、負けを覚悟した。
……煙の中、白旗が見えた。
『アスマロス海洋学校、C型戦艦操行不可。よって、スルエントロ海洋大学校の勝利!』
▪▪▪
試合後。
ギンガとバーモントは、スルエントロ海洋大学校の陣地へ赴いた。
バーモントとベルシアンは、握手を交わした。
「試合、お疲れ様でしたわ。」
ベルシアンがそう言った。
「お疲れ様でした。……まさか、F13ではなく、F14の改造型で来るとは思いませんでした。」
バーモントが言うと、ベルシアンは少し驚いた様子を見せた。
「型違いに気付いたのね。流石だわ……」
ベルシアンは、小声でそう呟いた。
「卑怯な手を使うだなんて、ベルシアンっぽく無いわ。」
似たような声が、門側の方向から聞こえた。
その方を見ると、ベルアンテとメーバが陣地の門前に居た。
「大会側に万が一バレたりしたら、一大事よ?」
ベルアンテが追い討ちをかけるように、言う。
「……隊長、言いたい事は済みましたか。」
メーバが言う。
ベルシアンとベルアンテは、数秒睨みあった。
「貴方には関係無いじゃない。」
ベルアンテはそう言った。
「何ですって……っ!」
二人は取っ組み合いになろうとした瞬間、副官二人に頭を叩かれた。
『『周りが見てるだろ!』』
……何故か、二人は少し嬉しそうな顔をした。
流石に、バーモントとギンガはそのやり取りには苦笑いしか出来なかった。
▪▪▪
その頃、シアラは落ち込んでいた。
自分が行った行為で、負けたからだ。
「……。」
自陣地のアフェルト内の机で、試合後からずっと頭を抱えていた。
「……シアラちゃん、大丈夫かな。」
遠目から、アミリーがマガイロにそう呟いた。
「うーん……」
何とも言えない。
「ここは私に任せて。」
後ろからイチカが声をかけた。
「……あ、はい。」
イチカはアフェルトに入る。
「シアラさん、大丈夫?」
その声に、シアラは少し顔を上げて頷いた。
目が少し赤い。……泣いていたんだろうか。
「……もしかして、自分がやった事で負けたこと、気になってる?」
そう言うと、シアラは縦に頷いた。
「気にする事は無いよ。」
「……えっ?」
シアラは、ビックリした様子を見せた。
イチカは、ポケットから小型レコーダーを出した。
再生のボタンを押すと、バーモントの声が聞こえた。
『シアラさん、やった事が裏目に出て、落ち込んで居ないかな。本来は俺らがやるべき事を、彼女が進んでやった事だし、落ち目は俺にある……』
シアラを庇う事を言っていた。
「試合後にね……『もし落ち込んでいたら、聴かせてくれって』バーモント先輩が言っていたのよ。重荷を背負わせたからって……」
それを聞いた瞬間、シアラは大粒の涙を流した。
イチカはそっと抱いた。
「……私も、ごめんね。二人に任せっきりで。」
シアラは首を横に振った。
▪▪▪
第3回戦の結果は以下の通り
第1戦
カウラベット海洋学校の勝利
第2戦
スルエントロ海洋大学校の勝利
この二校で決勝が行われる。
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