第23航行 大会記録:四日目突入
スルエントロ海洋大学校の戦艦は、『ミール・ルイルーヴェ戦艦』と呼ばれる。
大会は4日目に入った。
……3日目は天候が雨で海が荒れていた為、そのまま待機になった。
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余談だが、3日目の夕飯後に、シアラと話している時の事。
「お二人、確か……副官のギンガ君と、シアラさんでしたわよね。」
次の試合で対戦するスルエントロ海洋大学校の隊長であるベルシアンが話しかけてきた。
「あ、はい……。」
「申し訳ないわ。急に話しかけて。お二人の活躍、とても話題になってて。」
まさか、対戦前にそう言われるとは思いもしなかった。
ふと、ベルシアンは手元にある戦艦ノートを見つけた。
「それ、凄いわね。戦艦の情報が細かく記載されてるわ。」
ポツリと言った。
「……それほどでも無いですよ。」
シアラかそう言った。
「ただ、情報に流されないようにと言いたいわ。」
その言葉に、少し違和感を感じた。
……のだが、その時は言葉の意味は分からなかった。
「っと、いけない。話し込んでしまってごめんなさいね。……明日晴れたら、試合頑張りましょうね。」
ベルシアンはその場を去っていった。
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4日目は、雨は止んでいたが、曇り空だ。
波はそれほど荒れていない。
(このまま、晴れると良いのにな。)
と、ギンガはそう思った。
変な胸騒ぎがする。本当に何事もなければ良いが。
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シアラは、その日もまた相手陣地へ向かっていた。
(昨日、ベルシアンさんの言ったことは何だったんだろう。)
シアラ自身もあの言葉が引っ掛かりつつも、相手陣地へ入っていった。
アフェルトには、ベルシアンを含め数人居る。
「……さて、アスマロス海洋学校戦の戦艦だけれど、C型はC18戦艦。F型はF14が2隻、F13が4隻。A型はA8を2隻使用するわ。」
C18型戦艦、F14型戦艦、A8型戦艦は基礎型。
F13は、F14を一回り小さくした機動重視の戦艦だっけ。
意外と普通だ、と思ったシアラはそのままその情報を持って陣地を後にした。
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「彼女、行ったかしら。」
ベルシアンは、副官のリュウにそう呟いた。
リュウはアフェルトから少し身を出した。
「……はい、陣地を後にしましたね。」
「そう。……で、戦艦の『アレ』は準備は出来ているかしら。」
「昨晩のうちに、管理科に頼んでやって貰いました。……ですが、流石にこの事はバレませんか?先生方にも報告はしませんでしたし。リスクが――」
「一応、もしもの為に色々考えているわ。先生方にも、修理で不意だったと話を通しておくわ。」
リュウは不安そうに頷いた。
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シアラは、自陣地へ戻るとそのままアフェルトに向かった。
例の如く、戦艦の事を話した。
「F13で攻撃を仕向けると思うな。機動性はうちのF型といい勝負だからね。」
ギンガがそう言った。
「もしそれなら、護衛のF型は3隻にした方が良いのではなかろうか。機動性重視とはいえ、ルイルーヴェ系は攻撃力は高い。」
バーモントが言った。
「そうですね。」
その時、試合10分前の声かけがあった。
「……では、皆さん。頑張りましょう。」
バーモントがそう言うと、皆は頷いた。
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