第21航行 大会記録:二日目突入
セルイントロ海洋学校の戦艦は、『セル・ルイルーヴェ戦艦』と呼ばれる。
2日目に突入した。
ギンガは、前日あまり良い寝つきでは無かった。
何だか嫌な感じがする……。
それでも、無理やり身体を起こして大会会場へ赴く。
(……あれ、不穏な雰囲気。)
ちょっと遅れて会場入りをしたが、先に入っていた先輩達の表情が暗い。
「あの、おはようございます……」
ギンガが挨拶すると、皆はこっちを向いて挨拶をした。
「何か、あったのですか?」
暫く沈黙の後。
「ミミナがな、昨晩亡くなったそうだ。」
とバーモントが言った。
「え……」
言葉を失った。
ミミナ先輩が、亡くなった……?
「俺達の結果を聞いた後、突然心肺停止になってな。それで……」
バーモントは言葉が詰まる。
……もしかしたら、1回戦を突破出来たこと、嬉しかったのかな。
でも、それをきちんと僕たちの言葉で言いたかった。
皆が涙を流している。
(……嫌な感じは、この事だったのかな。)
でも、このままじゃ士気が下がるだけだ。
「ミミナ先輩は……僕たちに期待をしたのではないでしょうか。」
ギンガはそう言った。
その言葉に驚く様子を見せた。
「僕たちに今出来ることは、ミミナ先輩に恥を見せない戦い方をしなくちゃいけないと思います。辛いのは皆同じだから……!」
▪▪▪
その頃、シアラはセルイントロ海洋学校の陣地に赴いていた。
(まさか、ミミナ先輩が……)
亡くなった話は、自陣地を出る前に聞いた。
きっと、戻ってくる……そう思っていたのに。
(でも、私達に出来ることはしなきゃね)
何とか相手陣地に潜入。
そのまま、アフェルトに向かう。
中には、例の兄弟の片割れを含め何人か居る。
「次のアスマロスにも、前回の戦い方を採用するわ。」
ベルアンテが言った。
「またあのA型戦艦で周りを固める隊列ですか!?」
1人の生徒がそう言った。
「ええ。今回のはA11で囲むわ。」
A11型戦艦……確か、改良型で主砲は65mmのはず。
A型でも、こちらのF型の装甲を壊す程の威力はある。
「C型は基礎型を使うわ。……じゃあ、それでよろしくね。」
C型の基礎型……C16型戦艦は、主砲も副主砲も全部100mm越えの恐ろしい戦艦だっけ。
大元の戦艦でこれ程の攻撃力は世界1だ。
「前回のは、マグレで勝ったのも当然だったのに。」
さっきの生徒がそう呟いた。
チラ見だが、ベルアンテの隣に居るから副官なのかな。
聞いた話、前回の試合は相手方の指示が崩れたんだっけ。
思い出した、前年の試合用の配置は全然違うな。
なら、この戦艦配置を知らないと指示崩れが起きるのも当然だ。
「………なに?文句でもあるの?」
ベルアンテがそう言った。
「い、いえ。」
「これ以上、逆らったら……後で説教よ?」
その場が凍りついた。
(まずい、これ以上聞くの止めよ……)
必要な情報は一応得た。
そのまま、相手陣地を去った。
▪▪▪
シアラは自陣地へ戻ると、そのままアフェルトに赴いて得た情報を言った。
「前の試合と、同じ配列か。」
バーモントがそう言った。
「はい。」
「遭遇戦になるので、F型6隻を囲むようにしましょう。A型は、C型とF型の前方操行で、随時報告で良いと思います。」
ギンガはそう言った。
試合10分前の声かけがあった。
「それでは、行きましょう。」
皆は席を立つ。
「ギンガ君。」
バーモントが話しかける。
「先輩?」
「さっきは……ありがとう。本来なら、自分がしっかりしなきゃいけない立場なんだが……」
「謝らないでください。……僕はただ、そう思っただけですから。行きましょう!先輩!」
そうギンガが言うと、バーモントは頷いた。
(ミミナ。いい後輩が出来て……よかった、よな。)
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