第20航行 大会記録:シアラベット海洋学校編
「……これより、アスマロス海洋学校対、シアラベット海洋学校の試合を行います。生徒、一礼!」
「「お願いします!」」
試合が始まった。
戦艦が一気に操行し始める。
「試合前に話した通り、C型戦艦の護衛はF型2隻。A型戦艦3隻の後方にF型3隻を沿わす体制で、最後のF型1隻は指令の都度で対応お願いします。」
ギンガが指示をだす。
(尚、本来の通信師であるシアラは、C型戦艦ともう一つの護衛用のF型戦艦とのやり取りを行う事になっている。)
『『了解』』
「ここらからは、F型戦艦の皆さんにお伝えします。シアラベットの戦艦は、基本的に装甲が厚いので、うちらの戦艦では厳しい所があります。それに伴って、狙う箇所を限定的にしてください。それは……」
▪▪▪
試合開始から30分経過。
『こちら、F型3号。応答せよ。』
フリーで操行しているF型戦艦から、無線が入った。
「どうしました?」
『NNE3地点より、相手のC型戦艦を発見。』
「分かりました。護衛戦艦は何隻ありますか?」
『4隻。C型の進行方角より後ろ側に、操行しています。』
前方には置いていない。確か、シアラベットはこういう形で護衛しているっけ。
「3号はそのまま遠目で操行してください。」
その指示をしたあと、全体の無線に切り替える。
「こちら、F型2号。NNS3地点より、敵C型戦艦を発見。各A型及び、攻撃側のF型は、至急そちらへ向かってください。」
『了解!』
後は、相手の攻撃側の戦艦に見つからない事を祈ろう。
▪▪▪
その頃、シアラベット側の戦艦では。
「………おや、遠巻きで相手のF型戦艦がいるな。」
情報管理師の、マツメが言ってきた。
「様子見をしているみたいだな。一応、威嚇砲撃をしましょうか。」
隊長のドレンバードが言う。
何回か砲撃をすると、F型はその場を離れた。
「呆気ないな。」
そうドレンバードが言った瞬間。
『隊長、相手の戦艦が続々と来ます。』
と、甲板監視師からの報告を受ける。
「殆どのA型とF型で対応するのか。それに、正面と後ろ……両方から向かっているな。」
マツメがレーダー情報を見ながら呟く。
「とりあえず、何とか対処しろ……」
護衛のF型戦艦に無線を入れるが、戦艦の近くに弾の着弾する音が聞こえた。
『C型戦艦の後方に目掛けて、砲弾をしている。速度を上げて突貫しなきゃ撃たれるぞ!』
甲板監視師が言ってきた。
「F型は何をしている!」
ドレンバードの怒号が司令塔の中に響く。
『A型戦艦やらに、視界を憚られて……っ!』
「クソッ……。」
『……相手の狙いは、排気用の煙突!』
甲板監視師が言ったその瞬間、戦艦に衝撃が走る。
サイレンがあちこちから鳴っている。
「煙突から発火だ!」
マツメが叫ぶ。
『こちら機関室、[エラーコード08]によりエンジン出力低下。復帰不可能!』
エラーコード08、それは排気口の破損に伴うエンジン系統の不具合を示す……。
(……暫く装甲の厚さに、頼りきりだったんだな。俺たちは。)
ドレンバードはそう悟った。
C型戦艦から、白旗を出した。
『シアラベット海洋学校、C型戦艦操行不可。よって、アスマロス海洋学校の勝利!』
▪▪▪
試合に、勝った。
何年かぶりの、1回戦突破だ。
アスマロス海洋学校の応援団は、歓喜に満ちていた。
シアラベット海洋学校の、隊長であるドレンバードがこちらの陣地に赴いた。
ドレンバードとバーモント……隊長同士、硬い握手を結んだ。
勝ち負け関係なく、お互いの健闘を思いやるのは大事な考え方だ。
「試合、お疲れ様でした。……今回の戦術は、一体誰が考えたのでしょうか。」
ドレンバードがそう聞いた。
「はい、僕ですけど。」
ギンガが名乗り出ると、ドレンバードは一礼をした。
「貴方でしたか。……とても良い戦術でしたよ。」
ギンガは驚いた。まさか、相手方からこんな言葉を頂くのは思いもよらなかったからだ。
「弱い部分もあるのにも関わらず、装甲の厚さだけで勝てるモノと思い込んでいた部分がございました。……改めて、勝利おめでとうございます。」
▪▪▪
第1回戦の結果は、以下の通り
第1戦
カウラベット海洋学校の勝利
第2戦
イルアガロス海洋学校の勝利
第3戦
アスマロス海洋学校の勝利
第4戦
セルイントロ海洋学校の勝利
第5戦
イガラベット海洋学校の勝利
2回戦の組み合わせは、以下の通り
第1戦
カウラベット海洋学校
VS.
イルアガロス海洋学校
第2戦
アスマロス海洋学校
VS.
セルイントロ海洋学校
第3戦
イガラベット海洋学校
VS.
スルエントロ海洋大学校
2日目に突入。
▪▪▪
「ミミナ、学校の皆……大会、1回戦突破だって。良かったわね!」
エルアがミミナに話しかける。
それを聞いたミミナは、微笑んだかと思うと……うっすらと涙を浮かべ、眼を閉じた。
その瞬間、心電図モニターの警報音が鳴り響く。
「ミミナ……ッ!?」
エルアは慌てて内線を取る。
「先生っ!ミミナが、ミミナがっ………!」
その後、ミミナが眼を開ける事は無かった――
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