第19航行 大会記録:序章
シアラベット海洋学校の戦艦は、『シアランガ・ボレン戦艦』と呼ばれる。
グレンドー国に着いた。
試合会場にある、自分たちの陣地に戦艦を停める。
他の学校の生徒や先生、観客でいっぱいだ。
「皆さん、陣地にて待機をお願い致します。」
大会の役員生徒が声をかける。
大会の開会式まで、少し休む事になった。
▪▪▪
30分後、すべての学校が揃った。
開会式の式場へ赴く。
「やっと始まるのねー。」
シアラがそう言う。
「そうだね。……緊張する。」
大会は1週間行われる。
(試合は全4日ほどで終わるが、天候悪化を見越しての事だ。)
近くに宿泊施設もあり、そこで寝泊まりする。
▪▪▪
大会の開会式が始まった。
『これより……第86回、海軍戦略式技術大会の開会式を執り行います。まず始めに、大会会長のアチェラガス大佐より、ご挨拶を。』
アチェラガス大佐は、長年大会の会長を務める海士だ。
「えー、この大会に出ます、海洋学校全生徒の皆さん。日頃の練習の成果、存分に発揮をし……全力で遂行するように。」
「……上の階級の方にもなると、やっぱり雰囲気が違うわよね。」
シアラがそう囁いた。
確かに、威厳があるって感じがする。
『ありがとうございます。次に、大会優勝旗の返還。』
ウェストローガ海洋大学校の隊長である、テローガが壇上に上がり、優勝旗を返還した。
『最後に、選手宣誓を行います。』
今年度は、バーモントが宣誓を行う事になっていた。
バーモントが壇上に上がる。
「我々海洋学校の生徒は、全力を出して試合を行います!」
『それでは、これより第86回海軍戦略式技術大会を執り行います。』
ワーッと歓声が聞こえてきた。
これから、試合が始まるんだ。
▪▪▪
開会式が終わった頃。
「よし、変装はこれで大丈夫だね。」
シアラは、こっそりと陣地を抜け出して変装をした。
作戦会議までの5分。それまでに情報を持ち帰りたい。
「確か、シアラベットの陣地は向こう側だっけ。」
学校旗を目指して歩く。
相手の陣地の門には、生徒がいっぱい居た。
(言葉を発しなければ、大丈夫……)
と念じながら、そっと入る。
作戦会議用のアフェルト (簡易型のテント) の脇まで近づく。
中には、生徒が数人居る。
「初戦のアスマロスですが……C型は、C17型戦艦。F型はF13が4隻、F12が2隻。A型は、A10が3隻で構成します。」
隊長が言った。
C17型戦艦、F13型戦艦、A10型戦艦は基礎型戦艦。
F12型戦艦は、確か攻撃に特化した改造型だっけ。
多分、その2隻でうちらを攻撃するのかな。
「……?そこの君。」
後ろから、誰か話しかけてきた。
振り向くと、相手の生徒みたいだ。
「見たこと無い顔だが……?」
(ヤバイ、バレた!?)
そう思ったシアラは、後退りすると門の方面へ走った。
「ちょ……ちょっと待て!みんな、侵入者だ!」
「ヒッ、ヒィィ!」
完全にバレてしまった。
全速力で、逃げろ……!
▪▪▪
「な、何とか大丈夫……。」
シアラは、息を切らしながら何とか逃げ切った。
急いで着替え直し、そのまま陣地へ戻る。
「あれ?シアラ……何処行っていたんだ?」
マガイロが話しかける。
「……あ、ちょっとトイレにね。」
怪訝そうな顔をしたが、マガイロは頷いた。
「そうだ、ギンガくんは?」
「アフェルトに居るよ。そろそろ会議が始まると思うよ。」
「あ、ありがとう。」
その足で、アフェルトに向かう。
中には、バーモントとギンガ、そして艦長が数人居る。
「……あ、シアラさん。」
イチカが気がついた。
他の人も、座りながら会釈する。
「……もしかして、相手の陣地に行っていたのか?」
バーモントが不意に言った。
「どうしてそれを……?」
バーモントが自分の上着を摘まんだ。
えっ?と思ったシアラは、自分の上着を見ると……
「あっ、これ相手の上着まんまだ!」
慌てて着替えていたから、気がつかなかった。
マガイロが怪訝そうな顔をしたのは、そうだったのか。
その様子を見て、その場に居た皆が笑ってしまった。
シアラ自身、顔が赤くなるのがわかった。
「……ごめんごめん、別にからかう訳では無い。それを見て、潜入してくれたと思っているよ。何か情報は得たのかな?」
シアラは、さっき得た情報を伝えた。
「……なるほど、分かりました。」
「F12は攻撃型だったよね。」
ギンガはそう言うと、シアラは頷く。
「もう少し多く配備すると思ったけど、それほどでは無いから……F型の護衛は、2隻で十分と思います。その分、他のF型は攻撃に回しましょう。……あの作戦を行う為に。」
皆は頷いた。
審判員の一人、マチェル少尉が「試合開始10分前です」と伝えてきた。
「わかりました。では、皆さん……これからが本番です。」
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