第17航行 大会前の合宿:前編
大会まであと1週間。
大会の構成も、練習も……大詰めになってきた。
一層と気が引き締まる。
この日から3日間は、練習に特化すべく合宿を行う事になった。
……まあ、実態は夏休みに出来なかった分の練習を行う為だが。
学校が所有する、野外演習島で行うみたいだ。
▪▪▪
船を走らせて、40分。
ようやく着いた。
島の中には、グラウンドと宿泊施設があり、周りも広々している。
燃料の予備タンクもあるとのこと。
「一先ず、部屋に荷物を置け。10分休憩したら、説明を行うぞ。」
シキハ先生の号令の元、行動に移る。
男子は5人で1部屋、女子は全員で1部屋らしい。
各自、部屋へ移動する。
部屋へ入って、荷物を置く。
今回の相部屋は
マガイロ
ファン
バイル
セバレン
……と一緒になった。
バイルは、ファンとのルームメートで、ギンガの代理としてA型戦艦に搭乗してもらっている。
セバレンは、管理科の一人だ。
「……まさか、こんな場所があるとはなぁ。」
マガイロが呟いた。
「いつでも使えるよう、毎月1回は見回りと点検をしているみたいだ。」
ファンが言った。
▪▪▪
休憩後、全生徒はグラウンドへ出た。
「……さて、皆さん。これから説明を行います。」
アガミ先生が説明を行う。
「本日は、基礎体力の強化をする為、運動を行います。二日目は、2つのミニ艦隊を作り、戦術の確認。そして、最終日は大まかな隊列行動の確認を行います。」
「あっ、あの!ミニ艦隊ってどんな感じですか?」
シアラが声をあげる。
「C型艦1隻、F型艦3隻、A型艦2隻です。F型とA型は学年問わず入ってもらいます。尚、1年生の管理科も混ざって入ってください。……では、練習を開始します。」
▪▪▪
基礎体力の練習は、グラウンドから島の外へマラソンを行っていた。
5周回る事になっていて、順調に進んでいたが……。
「……ねえ、みんな。アミリーちゃんが見当たらないの。」
完走したあと、シアラが話しかける。
「そういや、アミリー……周遅れで走っていたよな。大丈夫かな。」
「「キャーー!!」」
その時、島の裏山側の方からアミリーの叫び声が聞こえた。
「………っ!?皆、急ごう!シアラは先生に報告を。」
「う、うん。」
ギンガ、マガイロを含め、何人か山の中へ入っていく。
「アミリー!どこだー!?」
皆が声を掛けながら探す。
数十メートル入った所で
「………たっ、た………たすけ、て……!」
と声が聞こえた。
道を外れた斜面の下に、アミリーの姿が見える。
どうやら、滑り落ちたみたいだ。
「アミリー!大丈夫か!」
マガイロが声を掛けると、アミリーは頷いた。
「助けるから、そのまま動かないで。」
ギンガは、非常用の打ち上げ花火をあげた。
居場所を知らせる為だ。
「……大丈夫か?」
数分後、シキハ先生がやって来た。
「何かの拍子で落ちたみたいです。」
「分かった。俺が行こう。」
アミリーは無事に保護された。
彼女によれば、草むらから出てきた動物に驚き、斜面を転げ落ちてしまったみたいだ。
そのまま、合宿所へ戻り身体を診てもらう。
「所々打撲が見受けられますが、脳には異常無いし……幾日もすれば治るでしょう。ただし、船に乗るのは避けた方が当分よいかと。」
保健医のミチル先生がそう言った。
「………す、すいません。」
申し訳無さそうに、アミリーは呟く。
「いや、無事で良かったよ。あれは謝る事じゃない。」
「ギンガくんの言う通りよ。今はゆっくり休みましょ?」
アミリーは涙ながらに頷いた。
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