第14航行 三人三色の夏休み マガイロ編
マガイロは、戦艦のメンテナンス要員として、夏休みも学校へ残っていた。
今日は、C型戦艦のメンテナンスをする。
「マガイロくん、お疲れ様。」
マヒロ先輩が声をかける。
3年の先輩で、色々教えて貰っている。
この日は、二人で作業する事になっていた。
「お疲れ様です、先輩。」
「1年は残らなくても良いって話だったのにね。」
移動途中、先輩が呟く。
夏休み中のメンテナンスは、普通2年と3年の持ち回りで行う。
……だが、マガイロだけは自主的に残っていた。
「俺の場合は、実家が遠いのもあって……此処に残った方がいいと思ったんです。」
「そっか。なんか申し訳無いな。」
「いえ。」
▪▪▪
メンテナンスは、以下の事をする。
・エンジンの始動を行い、燃料タンクの漏れやエンジンの不具合の有無の確認
・レーダー機能を含めた、司令塔のコンピューターの確認
・緊急停止をするときの、速度制御装置の発動の確認
・脱出用のボートの破れや、脱出装置の作動確認
・舵機能の確認
・砲台の回転の確認
……ざっくりとだが、こんな感じの事を確認する。
戦艦港に移動した二人は、C型戦艦に乗り込み、機関室へと入る
「さてと、これからメンテナンスを行います。」
▪▪▪
2時間後、全てのメンテナンスと機能の確認を終えた。
最初の日、メンテナンスを行った時は、慣れない作業でクタクタになっていた。
………まあ、少しは慣れたかな。
「お疲れ様。」
マヒロ先輩が、ペットボトルの水を持ってきた。
「ありがとうございます。……そう言えば、先輩に聞きたかった事があるんです。」
「んー?どうした。」
「うちの学校、どうして基礎型 (※1) の戦艦しか無いんでしょう?他校は、改造型 (※2) があるのに。」
この件は、シアラの戦艦ノートを見てからずっと気になっていた。
先生に聞こうとしたが、なかなか聞き出せなかった。
「……あぁ、それは元々うちも持っていたんだ、改造型は。でも、学校の資金面が危うくて、数年前に解体して資材を売ったと聞いている。」
「そう、なのか……。」
「……見ての通り、うちの学校は歴史の割りに生徒数が少ない。だから、行政からの支援が少ない事らしいんだ。」
それは仕方がない、と言えばそうなるかもしれない。
でも、やっぱり今の戦艦以外にも戦艦を持つべきだとは思う。
その事を先輩に言ってみた。
「まあ、そこはマガイロくんの言う通り。……どうにかして、資金を集めたいよ。」
▪▪▪
その日の夜、ギンガに昼間の話をした。
『…………資金不足だから、手放したのか。でも、今のままじゃレベルは上がらないと思う。』
「そうなんだよ。」
『今年の大会までには無理だと思うけど、来年以降は、何とかして資金を集めて改造型を1隻造りたいと思うけどね。』
やっぱり、ギンガも同じ事を考えていた。
「ギン、大会が終わったら……募金でもしてみたいのだが。」
『断りもなくか!?』
「少なくとも、俺はそうしたいし、先生……何なら、校長先生に直談判でもしてやりたい。だから………」
少しの沈黙のあと
『分かった。僕も手伝うよ。』
と、言ってくれた。
ギンガに言って、正解だったのかも知れない。
こうして、夏休みが過ぎていった。
▪▪▪
(※1) 基礎型戦艦
スタンダードの戦艦。一定数の配置をしなければいけない。
内訳は以下の通り
C型戦艦:4隻
F型戦艦:15隻
A型戦艦:6隻
の計25隻が必要である。
(※2) 改造型戦艦
基礎型をグレードアップさせた戦艦。改造型は、必要に応じて配備が出来る。
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