第13航行 三人三色の夏休み シアラ編
『シアラの持っている、ノートの写しと大会記録のDVDを貸して貰いたいんだ。戦術の役にたてたいから。』
終業式、ギンガにそう言われた。
夏休みを少し利用して昨年の大会記録を見直した。
『1日目、第1戦はアスマロス海洋学校対、ネルサイントロ海洋学校です。』
「うげ、最初から厄介なあの学校と戦ったの?」
ネルサイントロ海洋学校のネル・ルイルーヴェ戦艦は、戦艦が速いのと攻撃力が高い学校だ。
毎年、上位にくい込む程強い学校だ。
「………あれ?」
F12型戦艦の中に、違う戦艦がある。
主砲は65mm砲が4基 (前方2基、後方2基) だが、長さが足りないのと、2基 (前方と後方) しか主砲が付いていない。
「これ、私見落としていたのかな。」
そこの場面で一時停止をし、戦艦ノートを見直す。
基本的なF12型戦艦と、守備力を高めた戦艦 (全長が少し長い戦艦) しか記載されていない。
「うわぁ、しまった。暫くの間、チェックしてなかったからなぁ。まだまだ違う戦艦があるの見落としてたかも知れない。」
そこから、1戦毎に戦艦を一つ一つ見ていった。
………やはり、いくつか見落としがあった。
勉強の合間にやっては、調べるのも苦戦。
終わったのは3日後だった。
▪▪▪
ギンガにノートの写しと、DVDを渡したあと。
その足で向かったのは、洋裁店だ。
向かった理由……それは、潜入に使う相手方の学校の制服を作る為、必要な材料を買いに来たのだ。
学校に潜入するのは規則で禁止されている。
………のだが、大会の相手陣地に潜入することは規則違反とは見なされない、そういう見解があると聞いている。
それを逆手に、試合開始前に戦艦の把握をしよう、そう考えた。
ほぼ独断状態だが、やってみるしかない。
「よし、これで全部買えた。」
ブレザーの素材を買った。結構な値段だった。
貯めていたお年玉、数年分を一気に使ってしまった。……仕方がない。
家へ帰ると、直ぐに衣装作りに取り掛かる。
事前にイラストを書いていたので、それを元に作っていく。
「裁縫は苦手だけど、頑張らなきゃ……。」
▪▪▪
「完成………!」
2週間かけて、全部の学校の航行服が出来上がった。
何とか、学校が本格的に始まるまでに間に合わせて良かった。
宿題、戦艦の見直し、航行服の制作で夏休みをほとんど費やしてしまった。
外へ出たの、買い物に付き合った位だっけ。
「ふぇ、ちょっと外へ出よう。」
普段着に着替えて、外へ出る。
今日は快晴。……まあ、その分暑いけどね。
「あ、シアラ。」
隣の家から、ギンガの声が聞こえた。
何処かに出掛けていたのだろうか、荷物を抱えている。
「丁度良かった。DVDを返したいんだ。」
「うん。分かった。」
「じゃあ、ちょっと待っててくれるかな。」
そう言うと、家の中へ入っていつた。
こうして夏休みは過ぎて行った。
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