第10航行 練習後の呼び出し、それから
練習試合があった日の放課後。
「………はぁ。緊張するわ。」
イチカは、生徒会室へ向かっていた。
例の、指示に反した航行についてだろう。
下の子達には、自分が責任を取ると言ったものの…。
やっぱり呼び出しは恐いものだ。
生徒会室に着いた。
「ふぅ………失礼します。」
生徒会室には、ミミナとバーモント、大会の戦術担当のアガミ先生が席に座っていた。
「急に呼び出してごめんね。…………今日の練習試合の事なんだけど、どうして指示に反したのかしら。」
「………その、あの状況で離れるのは違うと思いまして。」
必死に言葉を繋ぐ。
「私はね……その判断をしたのは誰かが知りたいのよ。」
「へ?」
思わない言葉が出て、イチカは驚く。
「『死角位置』の判断が咄嗟に出てくるなんて……って思ってね。それに、貴女を批難する訳では無いわ。指示を的確に行動してくれる貴女が、それに反してまであの判断を飲むのは、余程の事だと思うの。」
それ以上は反論出来ない。
「分かりました。正直に話します。」
▪▪▪
『1年のギンガ君、シアラさん。至急、生徒会室へ。』
校内放送がかかる。
教室に居た二人は、背筋が凍るのが分かった。
「ま、まさかあの事で呼び出しとか!?」
シアラがそう言う。
「とにかく、行こう。」
急いで教室を出る。
「………二人とも。」
ニアンが声をかける。
「あ、ニアン先輩。」
「俺も一緒に行く。何を話したか気になるし。」
生徒会室に着く。
「待っていたわ………って、ニアン君まで?」
ミミナが言う。
「すいません。どうしても気になって。」
「そう。まぁ、良いわ。……でね、話はさっきの練習試合の事よ。」
「ごめんね、死角位置の件……二人の判断だって話したの。」
イチカが申し訳無さそうに言う。
「別に構わないですけど、それがどうかして……」
「二人には、F型戦艦に乗って貰いたいの。サブ司令官としてね。」
「「えぇー!?」」
二人の声が響く。
「F型戦艦って、先輩達が乗ると思っていました!私とギンガくんが乗って良いんでしょうか。」
シアラが聞く。
「C型戦艦は3年しか乗れない規約があるけどね、F型戦艦とA型戦艦には学年制限は無いのよ。……それに、私の分まで頑張って貰いたいから。」
「えっ?」
最後の言葉、何だか………
「では、明日から二人はF型で練習してくれ。」
バーモントが言う。
「「はい!」」
4人は生徒会室を出た。
▪▪▪
「ミミナ先輩……どうして『私の分まで』って言ったのかしら。」
シアラが呟く。
それは自分も気になったのだが。
「もしかして病気の件を考えて居たのかな。」
ニアンがそう言う。
「先輩の病気って?」
「メーブラン感染症だったと思う。」
イチカが言う。
メーブラン感染症………動物から感染する感染症の一種で、肺の機能が低下する病。
他人へ感染はしないものの、免疫が作られないらしく、何度も感染すると死に至る非常に危険な感染症だったっけ。
「そんな病気に罹ってたなんて……。」
「僕達がそんな大役を背負っていいのかな。」
「……大丈夫だと思うよ。私達、上の学年も反対はしないだろうし。何にせよ、生徒会長の指示だもの。」
イチカが励ました。
▪▪▪
「ミミナ、本当にこれで良かったのか?」
後輩4人が去った生徒会室で、バーモントが聞いた。
「ええ。1年生から期待出来る生徒がいたら、成長をしてもらいたいもの。………それに、私はもう長くはないから。」
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