第7.5航行 シアラとアミリー
ちょっと時間を巻き戻して、入学式後のお話。
▪▪▪
初日の学校が終わった。
「はぁ……この広い部屋で一人かぁ。」
シアラは、寮部屋のベッドに横たわって呟いた。
相部屋になる、との話を聞いていたが……実際に言われたのが『相部屋ではなく、一人部屋として使う』と。
寮は、1学年50部屋 (相部屋で最大100人) 用意しているみたいだが、今年度の女子入学生は、全部で10人も満たなかったらしい。
「………………仕方がない、か。」
ピンポーン
部屋のチャイムが鳴る。
「は、はーい。」
ドアを開けると、同級生のアミリーが居た。
「確か、同級生の……アミリーさん?」
「は、はい。あの、一緒にお風呂入りませんか?」
寮の離れに、確か大浴場がある。
特に断る理由も無い、よね。
「うん。わかった……ちょっと待っててね。」
タオルと着替えを持った。
「お待たせ。行こっか。」
二人は、大浴場の方へ向かう。
(私、こうやって他の女子と行動するの……久しぶりかも。)
小学校入ってから、戦艦の魅力に取り付かれだが…その事が原因なのか分からないが、なかなか友達が出来なかった。
幼馴染みでさえ、『戦艦なんて男の子らしいわ』なんて言われて……ショックでそれからもう、その子と話をしなくなったっけ。
ギンガくんと出会えたのは、本当に奇跡なのかも……。
って、いやいや………そんな事思い出したって仕方がない。
「あの、あの……大丈夫?急に誘って悪かったかな。」
アミリーが心配そうに、顔を覗き込む。
「あ、ううん。大丈夫だよ。……そうだ、アミリーさんはどうして、この海洋学校に?」
私立の学校は共学だから、女子の学生が居てもおかしくはない。
けど、他の子がどうして入ったのかは気になる。
「わたし?……わたしね、海軍のお姉さんに助けて貰ったことあって。」
「助けて貰った……?」
「幼いとき、船の事故に遭遇した事があって。……お母さん、お父さんとも離ればなれになって、一人泣きながら船の中を歩き回ってた。その時に、救助に来た海軍のお姉さんに助けられたのよ。だから、そのお姉さんみたいになろうと思ったの。」
話している時の彼女の眼……なんだか、力強く感じる。
「私はね、戦艦を見るのが好きで。それで、この学校に入ろうと思ったのよ。単純だよね。」
アミリーは首を横に振った。
「ううん、そんな事無いよ。好きなものに関わる学校に入ろう、それも立派な理由だよ!」
……なんでだろ、涙が出てくる。
そんな事、初めて言われたかも。
「はわわ、な、泣かないで?ほら、涙拭いて……。」
アミリーが慌てて、ハンカチを渡す。
「ふ、ふぇ。ありがとう、アミリーさん。」
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そこから、二人は一緒に行動する事が多くなった。
……私、もう寂しくないかも。
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