第7航行 休日の過ごし方
毎週末は、学校の休みだ。
実家が近い生徒は、たまに帰る事がある。
それ以外は、大体寮で過ごす。
割かし実家が近い方に含むギンガだが、入学してからは一度も実家には帰っていない。
理由は特には無い、訳ではないが……長期休みしか帰らないと母と約束したからだ。
いずれは自立した生活を送る事にはなるから、今のうちに母と離ればなれの状態に慣れておこうと言うことだ。
母が作る料理が食べたいときもあるが……そこは我慢。
休みの日は、大抵ルームメートのマガイロと共に行動する。
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「ギン、ちょっと外出に付き合って貰ってもいいかい?」
ある日の休み、マガイロはギンガを誘う。
「別に構わないけど、どうしたんだい。」
「ちょっと買い物をしたくてね。……一人じゃ寂しくて。」
「分かったよ。」
ご飯の時にファストフード店を使う時や、ちょっとした買い物などは「外出許可の札」と言うものを寮長から受け取る。
「二時間で戻ってきてな~。」
「はい!」
男子寮の寮長、リサガさんから札を受け取り外へ出る。
その足で、地域最大級のホームセンターへ向かった。
「このお店、なかなかいい品揃えだよな。」
ふと、ギンガが言う。
「おう。親父も、この店で仕事道具を揃えているんだ。」
「仕事道具……もしかして?」
マガイロは頷いた。
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工具の売り場に来た。
「………あった、これだ!」
マガイロは、とある工具一式セットを手に取った。
「これ、ミタバ工具会社のじゃないか。」
「よく知っているな。……学校のも、これの系列の工具なんだがな。」
「……でも、どうしてこれを?」
「学校のモノでも良いんだがな、やっぱり自分で使うモノは持っておかないと。」
工具一式の会計を済ませると、学校へ戻る。
「………しかし、5万ツアン (※) か。結構いい値段したな。」
帰り際、ギンガはふと言う。
「全部揃えると、どうしてもな。……前、父親にちょっと会ったとき『自分の工具を持ちたい』って言ったら、お金を持たせてくれた。」
「成る程……。いいな、父さんが居て。」
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学校近くのとあるパン屋に差し掛かった。
中から、シアラとアミリーが出てきた。
買い物袋を持っていた。
「……あっ、二人とも。買い物行ってたんだ。」
シアラが気がついて話しかけた。
「おう。……シアラ達は、パンを買ったのか。」
「うん。ここのお店のあんパンが美味しいのよ。」
「シアラちゃんが教えてくれて。すっごく気に入ったの!」
確か、この店は『メイメイ堂』と言って、あんパンが美味しいと有名なお店。
あんパン好きのシアラの御用達だ。
「そうだ、このあと皆でお昼食べようよ。丁度いい時間だし。」
シアラが誘う。
……特に断る理由は無いな。
「じゃぁ、食堂で待ち合わせ!」
シアラとアミリーは、学校の方へ走っていく。
「怪我するなよー!」
マガイロが言う。
「はぁーい!」
母さん、僕……毎日が楽しいよ。
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(※) 『ツアン』はこの世界の通貨。
1ツアン=5円換算
つまり、マガイロが買った工具は25万円。お高い。
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おまけ
♪~ 美味しいあんパン食べるならっ
一度はおいでよ!メイメイ堂!
皆が大好きあんパンを
毎日毎日手作りだっ!
『その他のパンも取り寄せています。
パン屋と言えば、海近くのメイメイ堂へ。』
「歌なら兎も角、なぜCMの最後のセリフまで覚えているんだ?」
「だって、このCM好きだもの。同 然 で し ょ ?」
「お、おう。」
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