第8小節「その言葉を響かせ」
離れている間は永遠でしかし再会の喜びは一瞬である。
パーチェ王国に2日前覆った雲はなく快晴、パーチェ城に2台の車が停車する。
城の門番をしていた者にカイリが事情を説明して通してもらう。
「では参りましょうか」
ファデルとソラは1台目の車に乗っていたモニカ、カイリ、ルルフの3人が降りて会議室に向かった少し後に周囲の人間から自身の視認が出来なくなる装置のスイッチを入れて車から降りる。
謁見の間にはカイリ1人が入り国王に至急会談の場を設けたいと話した
「モニカ首相と会談だと!勝手にロゼリア国に行ったあげくそんな話をするとはどういうつもりだカイリ・コーダ!!」
「リヴァイ、落ち着け。此度カイリがロゼリアに行ったのはワシの命だ」
「国王様の!?だが何故会談などしなければいけない?」
「直接話し合いをすればわだかまりが溶けると、そうモニカ首相は判断されたのです」
「その言葉をまんまと信用してしまったのか、正直なのが裏目に出たなカイリ・コーダ」
「国王様お願いします!最悪の事態を避けたいと思うのはお互いだということを!」
「良いだろうカイリ、モニカ殿と会談をしよう。リヴァイそなたも同席するがよい、ロゼリア国の真意をそなたも見極める機会だ」
「わかりました、しかと」
会議室で既に待機していたルルフとモニカが立ち上がる。
「モニカ殿お久しぶりです。此度遠路はるばるよくぞお越しいただいて感謝致します」
「いえ、私としても貴方とじっくり話したかったですから」
「どうぞお座りください」
そして客人のいる城内でロボット達に下手に警備させるわけにはいかず、無人となった廊下をファデルとソラは歩いていた。
「だが会議室の前にいなくて大丈夫なのか?何も今いかなくても良いだろう」
「いやむしろ今だからこそいく必要があるんですよ、礼儀は必要ですし何よりも彼女の為にもね」
「まあそうだな」
二人がたどり着いたのは国王が玉座に座る謁見の間目的は玉座の後ろにある扉だがファデルの予想に反して謁見の間には銀髪の大男、フィン・ムドラがいた。
(しっかり見張り役を置いてやがったか、まあこちらには気づいてないようだから抜けちまうのが得策だな)
二人は慎重に、見られないとはいえもしもを考えて物陰に隠れながら玉座の後ろにある扉の近くまで移動した。
フィンは特に二人を確認するような仕草はしなかったのでファデルはドアのノブに手をかけた、その瞬間けたたましい警報が謁見の間に鳴り響く。
(なっ!?)
(しまった!センサーつけてやがったのか!!)
その警報に疑問を感じないわけもなくフィンが振り向く。
(声は出していない、このままゆっくり扉から離れたら誤差動したと思わせることができる!!)
ソラのそんな淡い考えは打ち砕かれた。
「侵入者、発見、倒ス」
そう言ってフィンは二人に向かって走り出した。
「くそ、だめか!!」
フィンの突撃から逃げる二人、フィンは姿なき侵入者の動きを何故か察知して立ち止まる。
「姿、見セロ、オ前達、俺、見エル」
「だそうだぜ?ファデル君」
「そのようですね」
二人は諦めて不可視認装置のスイッチを切って姿を見せる。
「オ前、コノ前、イタ、何故、ココ、イル?」
「少しその奥に用があってね」
「アノ扉、リヴァイ、ラン、俺、入レル、ソレダケ」
「だからこっそりがバレた今、強行突破って訳さ」
ソラはグレネードランチャーをフィンの足元に向けて撃つ、弾の中身は煙幕、爆発した後煙が室内を満たす。
「ソレ、無駄」
フィンの横からファデルが不意打ちしようと飛び込んできたのにあわせてフィンは攻撃を防いだ。
「なんだ?この煙でなんでガスマスクなしで見えるんだ?」
当然二人はガスマスクを手早く装備してフィンを倒そうとしたわけだがその何も見えていないはずのフィンに阻止されてしまった。
「仲間か?いやそんな感じじゃねえ」
「コノ煙、邪魔」
そう言ってフィンは部屋の壁を破壊して煙を払う。
「俺、強イ、お前達、俺ニ、勝テナイ」
フィンの姿が変わりだす、銀髪は収縮し肌の色が灰色に変化する。
「魔族じゃないな、魚人か?」
「いや獣人です」
フィンの皮膚は重厚な感じになり肘の辺りから突起物が現れる。
「イルカ?」
「恐らくは、さっき攻撃するときに何か感じたんですがあれはイルカが発する超音波。それでこちらの正確な位置を知れたわけですよ」
「なるほどな、見えない敵を聞き出したわけか」
フィンの本性が顕になり、フィンは二人との距離を一気に詰める。ファデル、ソラの順に殴り飛ばす。
二人はなんとか防御したが、まともに食らえば負けると感じてファデルはフィンに攻撃を仕掛ける。
ファデルの武器はまだ緑のエネルギーの刃の剣、それでフィンを斬ろうとしたが厚い皮膚に阻害され斬れなかった。
「くっ!!」
「無駄!」
フィンの反撃は重く、ファデルがかわしたその床に拳が突き刺さり城全体を揺らした。
パーチェ国王とモニカ首相の会談はリヴァイの介入する余地なく円滑に進んでいた。両者の言い分、そこに生まれた誤解、懸念。それらは確実に解かれていく。
「それでパーチェ王国の武装を完全にとは言いませんが一部でも解除していただき交易を徐々に復帰したいのですが」
「それは勿論、機械兵の生産量も減少しましょう。交易については日にちを見合わせて……」
その時会議室にも謁見の間で扉を開けようとした際の警報が鳴り響いた。
「なんだ!?」
「リヴァイ、どうなっている?」
「警報、城に侵入者がいることになっています」
「侵入者?」
「モニカ首相、貴方が何かしたのですか?」
「いえ、そんなことは……」
「そうですよリヴァイ殿。失礼です」
「ふん、ではお聞きしますが貴方が城に来た時車は2台でした。しかしカイリ・コーダを含めた3人は1台目の車から降りた。ならば2台目に乗っていたのは誰ですか?」
「2台目には護衛の人間が乗っているだけです」
「その護衛の人間が車から降りてこの警報を鳴らした。外部から侵入者がいない為そうとしか考えられませんが」
「しかし証拠もなしにそのような事……」
「いえ、国王様。これは明らかに彼女らの仕業ですよ、対話などはなからする気がなかった。彼女らはこの城の内部に工作員を潜入させて侵略する気なのですよ」
リヴァイの言葉は不思議な、それでいてその場の人間の思考を奪うかのような響きをもって会議の流れは変わりだす。