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第6小節「求む解と隣国」

 カイリは城に戻って今回の件の報告をしていた。

 ファデルが仲間の協力を得て逃亡を図った事。ロゼリア国に繋がる国境の橋にてファデルが負傷して橋から転落した事。全て包み隠さず。

 「それで?その協力者は?」

 リヴァイが尋ねる。

 「未だ捜索中です、ファデルさんもあの嵐の中を捜索するのは危険な為断念しました」

 「さんだと?あんな男に敬称など必要ない!国王、私は飛行型を使いあの男の捜索に当たります」

 「うむ、頼んだ……」

 国王は何か言いたげだったが諦めたのか返事のみである。

 リヴァイが部屋から出ていった後もカイリは頭を下げたまま国王の言葉を待つ。

 「一体何が気に入らないのやら……そうだカイリ、お主に少し頼みたいことがある」

 「なんでしょう?」

 「ロゼリア国に向かって欲しい。此度の件どうにもリヴァイの論は無茶苦茶だ。ロゼリア国に本当に戦争をする気があるのか聞きに行って欲しいのじゃ」

 「了解しました。必ずや」


 ファデルは真っ暗な空間にいた。足元には血貯まりがあり、そこから人の手と思われるものがいくつもファデルの足を触っている。

 「ふう……頼むぞ血肉に飢えた者達よ……」

 ファデルの言葉に反応したのか手が伸びてファデルの腹、カイリとの戦いの最後剣が刺さった場所に集中する。

 「そうだ……それはくれてやる。だから……」

 手はファデルの腹の中に侵入して少しした後、黒い剣先を取り出した。

 「これは中々良い鉱石を使ってるな……鉄に似てるが……」

 とりあえず観察はこれくらいにしてファデルは目を覚ます。

 「どうだうまくいったか?」

 隣で焚き火の暖に当たっているソラが尋ねる。

 「ええ何とか」


 ここはパーチェ王国とロゼリア国を隔てる川のパーチェ王国側、橋の下から川を少し下ると洞窟に辿り着く。そこにファデルとソラは隠れていた。

 この洞窟は地上にも繋がっているらしくパーチェ王国の現状に疑問を持った国民の何人かがこの洞窟に避難していた。

 「なああんた達、今日はこんな嵐だし機械どもが捜索してるから食料がないんだ。すまんな」

 「いやこっちこそ勝手に邪魔してんだから気にしなくていいぜ」

 「それよりも普段は一体どうやって生活してるんだ?」

 「まあ俺達だって毎日ここにいる訳じゃないさ。今日は偶々集会を開く日だったってだけだよ」

 「ロボット達の監視下じゃ生活しにくいだろ?」

 これはファデルがこの国の現状をみて疑問に感じた事だ。外に対して厳しいのは分かったが内の状態が全く見えてこない。

 「ああ、まあ確かに機械達がいると居心地は悪いが変な事しなきゃそこまでな?今日はちと不法入国騒ぎで外出を禁止されたが……」

 街があれほどまでに静かなのは恐らく不法入国者ではなくロボット達を恐れていたのだとファデルは考えていたがあながち間違っては無さそうだ。

 「不法入国者と言えばあんた達がそうなんだろ?なんだってこんな時に?」

 「少し人探しをね」

 「ああそうだ、半年じゃないな5ヶ月前にもこんな不法入国騒ぎはなかったか?」

 「5ヶ月前?いやなかったな、そもそもその時はまだ警備もそこまで厳重じゃない方だし、そこそこ他国との交易も人と人の間でやってたからな」

 (となるとその時潜り込んだがばれたのか……)


 翌日、洞窟にロボットがやって来ることもなく二人はロゼリア国に向かう準備をしていた。

 「にしてもここにロボットが来なかったのは意外でしたね、あの川からならここにたどり着かれそうなものなんですが」

 「案外ここを突き止めてるが俺達を捕まえるために準備している可能性もあるな。まあなんにしろ早く出ていった方が良さそうだ」

 二人はボートに乗り込み川を渡ってロゼリア国に辿り着く。崖という物理的な壁も登ってしまえば問題なかった。

 「それでどうするんだ?」

 「この国の首相に会いに行きましょう」

 まあそうなるよなといった感じの表情を浮かべながらファデルとソラは歩き出す。


 ロゼリア国首相官邸にてこの国の現首相モニカ・ハーケンは仕事をしていたが突然室内にファデルとソラの二人が現れて驚いた。

 「失礼モニカ首相、このような形でお会いしたくはありませんでしたが少し急を要しましてね」

 「あなた達何を!?今すぐここから出ていきなさい!」

 扉の前にいた銀髪の女騎士が剣を構える。

 「僕達はあなたに危害を加える気はありません。ただ話がしたいだけなんです」

 「それにしては随分と静かすぎる侵入のようですが?」

 「急を要していると言いました。僕達はパーチェ王国の使者として話をしに来たんです」

 「パーチェ王国!?」

 モニカも剣を構えていた女も驚く。

 「いいえ、違うわ。いくら緊急とは言え何の連絡も無しに使者を派遣するわけないわ!」

 「それがある事情により内密に使者を派遣しなければいけなくなったんです」

 「信じられませんね、ルルフの言うように緊急だからこうなるとは思えません。せめてあなた方がパーチェ王国の使者と証明できる物がなければあなた方を拘束します」

 「それなら……」

 その時ドアがノックされる。

 「モニカ首相、緊急の用事があるとパーチェ王国よりカイリ・コーダ様より取り次いで欲しいと……」

 「なんですって!?」

 ファデルは官邸に隠れて入る際に見覚えのあるバイクを見た。彼の予想通りなら少しは自分の言葉が響いたのだ。仮に何もなくとも彼はモニカに自身がパーチェ王国の使者だと説き伏せる気だったが……


 「どういう事なのか説明してもらいましょう。カイリさんを部屋に入れてください」

 「はっ」

 少ししてドアが再びノックされる。

 「失礼します。カイリです」

 「入りなさい」

 ドアを開けて中に入ろうとしたカイリが固まる。先日パーチェ王国を騒がせた二人が部屋にいたからだ。

 「ふぁ、ファデルさん……どうして?」

 「カイリさんお久しぶりですね、その方とはお知り合いで?」

 「え、ええまあ……」

 「この者達は先ほどパーチェ王国の使者として部屋に侵入してきましたが、使者とは本当の事ですか?」

 「え?」

 状況ののみ込めないカイリは少し考えて、

 「はいその通りです。元々は私だけでお伺いする予定だったんですが、証人を連れていった方が良いと思いまして」

 「証人?」

 「パーチェ王国の現状を中立的な立場でみることのできた証人です」

 「しかしなぜこのような?」

 「彼らにそれを証明できる物を持っておらず仕方なくこのような形を取ってしまいました。大変ご迷惑を……」

 「そうですか……ではそういうことにしておきましょう」

 モニカ首相はこれ以上問答しても夢だと思ったのか話の本題をこの奇妙な3人から聞き始める。

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