第22小節「終わりは投げ槍に」
「終わったな」
【銀騎士】はリヴァイが撃ち落とされる様子を見てそう呟いた。
そして次に収束している黒い雲の方を見る。
「戦闘員を全員失い、残るは戦艦のみ。こうなればアレと特能の双子が止めるのは容易だ」
【銀騎士】は双眼鏡を片付けて、アタッシュケースの中に入っていたスイッチを取り出して押した。
「ぬわっ!? な、なんだ?」
ソラは船内を探索中、突然身体が重くなる。
その原因は彼が抱えているフィンにあった。
「こ、これは……!!」
フィンはいつの間にか青い繭のようなモノに包まれていた。
「お、重い……。一旦、降ろすしかないか……」
繭はどんどん重くなっていき、ソラはとうとう繭を床に降ろす。
「はあ、たく……。こんなんだったらちゃんと装置で運ぶべきだったな……」
しかし装置で運んでいたとしてもこの繭の状態になった可能性は十分にある。
ソラは繭を持ち上げようと掴むが、
「うぐぐ!重たいのか?いや、地面に張り付いている、二重苦かよ……」
ソラはその後も繭を持ち上げようとするが、装置を使おうとしてももはや手遅れのようであった。
「ちっ、仕方ねえ。置いていくか」
「ルルフ殿、大丈夫ですか?」
「ええなんとかね、それよりもリヴァイは……?」
「……それが、床に叩き落とした後、リヴァイが落ちたと思わしき場所に繭のようなものがあって……」
「まだ隠し玉があるの……」
「いや、そういうわけじゃないと思うぜ」
足の応急処置をしていたルルフとカイリの会話にソラが割って入る。
「ソラ殿!ご無事で何よりです!」
「ああ、さっきフィンもお前たちが話していた繭にくるまれてな、運ぶこともできないから置いてきたが。リヴァイって野郎の様子も見たが同じ状態だった」
「しかし、まだ蘇る可能性も……」
「ないとは言い切れないが、長年の経験上、あれは口封じだろう」
「口封じ……ですか?」
「連中は何度も負けるような奴は死をもって処する。とにかくそろそろここを脱出した方がよさそうだ。アレに巻き込まれそうだからな」
ソラが指さす方向には雲が収束している、雲は大きな雲を作り出してその中心に吸い込まれそうな穴が開いている。
「あれは……」
「最終的にはあの雲が船全体を覆う、そうなる前に脱出するんだ」
「はい」
ソラ達は甲板で脱出手段を探す、ここに来る時に乗ってきた戦闘機は使い物にならなくなっている。
「あったぞ!」
ソラはボートのようなモノを見つける。
「こ、これ本当に大丈夫なんですか?」
「陸空海汎用の乗り物だな、むしろ陸を走る戦艦にこういうのがないわけない」
「そ、そういうものなんですか……」
カイリとルルフは渋々とボートに乗り込む。
「初めて扱うから操縦に関しては文句言ってくれるなよ?それじゃあ!」
ソラはボートのエンジンを作動させる。
「あれは……、間違いないソラさん達だ!やっぱり勝ったみたいだな」
ファデルは地面に向かって落下していくボートを双眼鏡で確認しながら、車の助手席を見る。
ラムも既に繭に包まれており、動く気配はない。
「……お二方、少し予定を変更します。もうこのまま戦艦を破壊の段階にまで行きたいです」
『聞いた?ラミア姉様、アイツって勝手ね』
『全くだわ、レヒア姉様、アイツの言いなりにはなりたくないけど……』
通信機越しに双子の共鳴が聞こえる。
『『♪【嵐】は
【蝶】に治まる♪』』
収束していた雲がいよいよ荒れだす、幾重もの雷を落として砲台を潰していく。
「こっちももたもたしてはいられないな」
ファデルは、弾丸と貝達の一部が入ったケースを、槍に取り付けて回し始める。
「『血は、生命は、流れ廻り、繋がっていく』!はあっ!!」
槍を雲の穴の中目がけて投げた。
槍は雲の中でケースと共に弾けた。
そして雲の中より槍の雨が降り始めた、槍は戦艦に向かうのではなく空中で何かを形成し始めていく。
槍が集まり、巨大な槍と成った瞬間、槍は戦艦を貫いた。
槍に貫かれた戦艦を雲が取り囲む。雲はやがて蝶のような形になって、戦艦を上空に運んでいく。
それからどれ程の時が経ったのか、遥か上空で激しい光とその後に続く爆発音によって戦艦は破壊された。




