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第19小節「選択の時、繰り出される奏乱」

 ラムにとって今の状況は最悪であった。

 目の前にいる敵であるファデルは重傷を負わせることが出来たが自身の方が危険な状態である。

 左肩に突き刺さった槍はロープを伝ってファデルが固定している、右手にもダメージを受けているため銃は左手で撃つしかないのだが左手も痛みによって動かせない。


「形勢逆転だな、このまま抵抗しなければ死なないで済むから、お互いのためになるんだがな」

「ふ、ふざけるなっ……!誰が、そんなっ……」

「そんなお前に残念なお知らせがある。今お前の左肩に突き刺さっている槍、そしてさっき僕が右手に撃った銃弾には毒が塗られている」

「なっ……!?」

「毒は遅効性だ、今大人しく投降すれば解毒剤をやる。いいか、これはハッタリじゃない、後数分もすればお前の身体は死に向かっていくだろう」

「……はぁ、はぁ……」


 ラムは先程のファデルと同じように息が荒くなる。

 この状況を打破できるような案がラムにはまったくもって思い浮かばない。

(一体どうすれば……、銃だって手に持ってるのがやっとだって言うのに!!)

 思考を巡らせ、イメージをしていく、

(このまま毒の効きを待てば出血であいつが死ぬ……、最悪相打ち覚悟で待つ……?でも毒の効力が分からない以上どちらが長く生きれるか分からない、いえ間違いなく私が死ぬ方が早い、あいつはそう確信しているから毒の話をしたのよ!)


(ならばこの銃であいつを殺して解毒剤を奪う、それしか道はない!)


 ラムはこれより来る痛みを堪えて銃をファデルに向けて引き金を引いた。

 発砲音が響く、ラムはまるで自身がスローモーションの世界にいるような感覚に浸っていた。


 左肩から先の腕は引きちぎられたかのように落ち、宙を舞っている。

 右手も完全に消え去り、その浸食は止まっていない。

「ば、……か、、、な……」

 ラムはその場に跪いて気を失った。



 ファデルは槍を手繰り寄せながら、ほっと一息ついた。

「死んではいないようだが、……この感じだといつこと切れてもおかしくないな」

 長方形型のケースのような機械を取り出して撃たれた箇所に当てる。

 撃たれた部分のアーマーはガラスのように割れて、破片がポロポロと落ちている。


「今度は回収されないようにしておかないと、それにしても……いささか時間をかけすぎた」

 立ち上がり、ラムの脚を縛って近くまで呼び寄せていた車にラムを乗せる。

 自身も運転席に乗りこむ。


「うっ」

 地面に嘔吐しながらも扉を閉めて息を吐き出す。

「はぁ……、少しは、あー、ましかな」

 ケースを助手席に置いて車を発進させる。




 カイリとルルフはリヴァイの不規則な動きに翻弄されていた。

 防護壁によって空を覆われ、リヴァイが高高度に逃げれないため戦いやすくなったと思っていた二人だったが、実際はまるで違っていた。


「このっ!」

 カイリは大きく跳躍してリヴァイに迫る、だがリヴァイは何かに引っ張られるかのように空中を進んでカイリから逃れる。


 先程よりリヴァイはこのように二人の攻撃、否、攻撃すらさせずに永遠と縦横無尽に逃げ回っているのだ。

(やはり、あれをどうにかしなければ……)

 この縦横無尽の動きの正体は掴めていた。


 三人の周りには人が乗れるくらいの大きさの木の箱が浮かんでいる。

 そしてリヴァイは肩にある突起から出るワイヤーを使って、木の箱から木の箱へ移動しているのだ。

 これだけならば軌道を呼んで追撃する事はできる、だがリヴァイも当然それを把握して、時にワイヤーを切って自身の翼で飛んで回避しているのだ。


 予測不能な動きに二人は対応できない、

 かと言って木箱も攻撃してもまるで壊れる気配がない。


「ふむ、そろそろいいだろう」

 リヴァイは空中で止まり、剣を振った。

 するとあたりの木箱が一斉に動き始めた。


「なんだ!?」

 木箱はぶつかり合い、離れ合い、その軌道の先には二人もいる。

「こ、これは!? 気を付けてくださいカイリさん!いくつか木箱の間にワイヤーが張ってあります!」

「くっ!」

 カイリにもそれは見えた、自身の横を通過しようとする木箱の間に、細いワイヤーがある。

 なんとかスライディングして避けるも、横から木箱が迫る。


(しまった!リヴァイの狙いは私達の体力を消耗させる事だったんだ!! この状況が続けば私達の体力は尽きてしまう!)

 木箱の勢いは中々で、剣でも弾き返すことが出来ない。

(こうなれば、師匠から教わった技を使うしかない!!)




「カイリ、お前さんに足りん『押し』を出すのには『引き』と『溜め』の答えを自ら引き出した。それを活かした技も必要じゃが今は私の技を教えよう」



(この技は今の状況には最適だ!)

 カイリは足を大きく引いて重心を下に落とす。

 そして勢いよく跳躍した。


「血迷ったか、私には届かんぞ?」

 リヴァイはあざ笑いながら剣を振り続ける。


「そこ!」

 カイリは目の前に迫って来ていた木箱を蹴って回転する。

「なんだ、一体?」

 カイリは自身に迫る木箱を次々に身体全体を使って跳ね返っていく。



「技自体は使い時が限られるが要領は同じ、これがお前さんの更なる先に導くことを願っておるぞ」



「くそ、どうなっている!?」

 リヴァイにも焦りが見えたその時だった。

(今だ!)

 木箱を足場にカイリは大きく突き進む。目前に迫って来る木箱は剣を使って受け流す。

「なにっ!?」

 カイリは剣を突き出し、リヴァイに迫った。


 しかし、カイリは突然止まった。

「ふははは!残念だったな、予想外にも備えてこそだ!」

「まだだ!」

 カイリはなんと自身の持っていた剣を投げるもリヴァイはかわした。

「ふん、そんなもの当たるわけが……」

()()()は、違うだろ!」


「なっ!?」

 リヴァイはその直前まで自身に迫っている脅威に気づけなかった。

 元々カイリが飛び出してきたためにそちらに集中していた。


 それ故にもう一人のルルフの存在を忘れていた。

 ルルフは飛び交う木箱を上手くかわしながら身体を回転させ、その勢いで剣をリヴァイに向けて投げていた。


 剣は回転しながらリヴァイの右脇腹に迫って来ていた。

 カイリの投げた剣もブラフだったのだ。

 剣はリヴァイの脇腹を斬り裂いた。

「くぅ、おのれぇぇぇ!!」

 リヴァイは木箱を縦横無尽に動かしながら、その陰に隠れて逃げた。


「拘束が緩んだ、これなら!」

 カイリは拘束から抜け出してリヴァイを追った。




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