第15小節「黒き影、三者と共に」
ファデルより通信機で知らせを受け取ったソラは2人に事情を説明した。
「それが本当ならば今すぐ戻らねば……」
「お前さん少し落ち着け、私の見立てならば今から山を降りても恐らくその襲撃とやらは既に始まっとるだろう」
「……何が言いたいんです?」
思わずソラが聞き返す。
「今、ほんの少しばかり小僧の仕上げを行う。ソレが済んで戻っても襲撃の最中には間に合う」
「師匠……、ですが……」
「俺も賛成はできませんね」
「心配せんでもええ、今から私の言う通りにやればそれだけでいい」
パーチェ王国にある広大な北の森より、その木々を優に超える巨大な黒い影が突如として現れた。
その影は木々をなぎ倒しながらゆっくりと進み始める。
城内にけたたましい警報が鳴り響く、
「来たか!」
ファデルは国の機械兵を管理する部屋にてその警報が鳴った原因をモニターに映し出す。
「こ、これは!?」
その黒い影の正体を見てファデルはとても驚いた。
ファデルは管理室を出て城のバルコニーに出る。
「北側だったな、せめて足止めになるといいが……!」
そこにルルフも走って来る。
「ファデルさん!一体何が……」
「襲撃です、ルルフさんも戦闘の準備をしてください。あと、出来れば双子の人達をここに……」
「……!! 分かりました!」
双眼鏡にて北側を見る、モニターでも見た通り黒い影はこちら側に来ているように見える。
「ん、あれは……」
黒い影の周りを別の何かが飛んでいる。
鳥型の機械。
「そういえばアレはまだ破壊していなかったな……」
黒い影に向かって何機かの戦闘機が向かっていく、ファデルが機械兵を改造して作り上げたのだ。
しかし戦闘機は次々に黒い影の攻撃を受けて破壊される。
「とりあえず作るだけ作っては見たがやはりこんなものか……」
「ちょっとあんた、何ボーっとしてるの?」
「あー、あなた様。私達を呼ぶとは一体どのような御用でしょうか?」
「二人に頼みたいことがあります、これから僕の言うとおりにして欲しいんです」
ファデルはこの世界にやって来る時に乗って来た宇宙船を呼び出して、乗り込んでいた。
船のチェックをしていると、通信機から着信音が鳴る。
『ファデル君、聞こえるか?』
「ソラさん、ちょうどよかった。連絡を取ろうと思っていたところです」
『遅れて済まないが、今からそっちに向かう』
「ソラさん、少し予定変更です。山を降りると人の乗れる仕様の戦闘機があります、それに乗ってください」
『戦闘機?一体どういうことだ?』
「山を降りていれば理由は分かります。蛇型の素材から作っているので、かなり丈夫な機体だというのは覚えておいてください。それじゃあ健闘を祈ります」
『おい、ちょっ……』
ファデルは宇宙船を起動する。
「……と!くそ、切りやがったな……」
「ソラ殿、大丈夫ですか?」
「えーと、……まあとにかくファデル君の言うようにするしかないか。カイリ君、移動しよう」
「承知いたしました。それでは師匠、行って参ります!」
「まあ頑張るんじゃの」
車で山を降り、ファデルの言う通りに来ていた戦闘機に乗るとソラは驚愕した。
「こ、これは……!?」
それはモニターに映された光景だった。
モニターには森を破壊しながら進んでいく黒い影の様子が映されている。
「へっ、へへ……。全くなんて連中だ」
それは巨大な戦艦だった。
黒く、巨大で、そんな戦艦が地上を走っていたのだ。
そのスピードはゆっくりながらも確実に進軍している。
「エンジン始動、システムオールクリア。発進」
ファデルは宇宙船を発進させて戦艦に向かっていく。
戦艦の砲台が一斉に宇宙船の方に向く、そしておびただしい数の小型ミサイルを発射する。
「いきなりか!!」
宇宙船は戦艦を中心に大きく回り込みながらミサイルをかわしていく、ミサイルは当然追尾型で後ろからくる爆発にも平静を保ちながら操縦する。
更にそこに銃撃が飛んできた、戦艦からではない、鳥型からである。
ファデルは宇宙船の高度を落としながら戦艦の近くを飛行する。
「こいつは少し離さないとな」
宇宙船より爆弾が投擲される、爆弾は空中で弾け、辺りに電撃を放電した。
宇宙船を追っていた鳥型はその放電をくらって軌道が狂う、そのままファデルは宇宙船を鳥型の後ろを取るように持っていく。
鳥型は軌道を修正しながらも宇宙船からの攻撃を警戒し、その射線上と思われる位置から逃げていく。
「乗せれたのか、あるいは乗っているのか……」
鳥型は想定通り過ぎるくらいには戦艦から離れ、市街の方に飛んでいく。
「足止めは頼みましたよ……」
ファデルは鳥型を追う。
宇宙船と鳥型と行違うように戦闘機が3機、戦艦に向かっていた。
搭乗者はソラとカイリ、そして城からファデルの指示で乗ったルルフである。
戦闘機は自動操縦であり、戦艦からの迎撃攻撃も現状ではかわしながら戦艦に近づいて行っている。
「これ程の巨大な戦艦をどうするかが問題だが……、中にいる操縦者を倒せばいいのか?これ見たく自動操縦ってオチもあるが……」
ソラは戦艦を見ながら呟く。
戦艦の後方に着地ポイントがあるとモニターに出てくる。
「……これは、罠か。向こうさんも俺達を最大の障害として認識しているようだな」
ソラはためらわずに戦闘機にそこに着地するように操作した。
カイリとルルフの機体は戦艦の上甲板に着地していた。
「ここからこの戦艦を操縦しているであろ敵を探しましょう」
カイリの言葉にルルフも頷いて動こうとする、
「そう簡単にいくとはお前も思ってないだろう?カイリ・コーダ」
何処からともなく蝙蝠男が歩いてきた。
「お前は……リヴァイ!」
「ふっははは、流石にもう敬称は無しか。やはり正直な男だ」
リヴァイは上機嫌に話しかける、彼は以前とは少し様子が違う。
特に肩は前方に、明らかに生物とは思えない突出した部位がある。
「そこを通してもらいたいものですが……」
「当然、そうはさせないから私が」