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間奏

「やはりこうなるか」

 カイリとルルフの前に銀色の鎧を纏った者が現れる。

「はっ!?」

 フィンとの戦いで既にかなり消耗していた二人は【銀騎士】が現れてもすぐに動くことができない。

「悪いがそいつを回収させてもらうぞ」


【銀騎士】が二人を押しのけてフィンを担ぎ上げる。

「!! させない!」

 フィンが【銀騎士】を攻撃するがその強固な装甲の腕に剣撃は弾かれる。

「うっ……」

「ふん、俺があまり干渉できなくて良かったな」

【銀騎士】は銃を取り出し二人の足元を狙って引き金を引いた。


「しまっ! ……逃してしまった」

 彼が放ったのは閃光弾、視界を奪われた隙に逃げられてしまったのだ。


 それと時を同じくしてファデルやソラ、そして双子のところには機械兵が現れ各々敵を回収されてしまった。

 しかしファデルはそこまで悲観はしない、今はとにかく現状をどうにかするように切り替える事にした。




 どこかの森にて【銀騎士】はフィンを乱雑に降ろしていた、彼が手配した機械兵も同様に戦いに敗れた者達を並べた。


「ん……、ここは……」

 リーダーのシータが目を覚ます。

「起きたか」

「し、【銀騎士】様!?」

 シータは彼を見た瞬間全てを思い出した。

 そして自分の横で気絶している3人を見て自分達が敗北したのだと悟った。

「【銀騎士】様、これには訳が……」

「言い訳ならお仲間とやる事だ。俺がしてやれるのはこういった回収作業と、」

【銀騎士】はこの世界にやってくる際に初老の男から受け取ったアタッシュケースを取り出した。

「チャンスを与える事だ。分かっているな」

「2度目は、ない……」

 シータ達はもう一回失敗した、次で目的を達成しなければならないのだ。




 翌日、パーチェ城ではパーチェ国王とモニカの正式な会議が行われた。

「それでは次の書類ですね」

「うーむ、まさかこれ程とは……」

 パーチェ国王は大量の書類にサインしていった。その内容はロゼリア国との国交回復及び貿易に関するものだ。

 半年の期間に生まれた溝は両者の歩みよりによって解消はされるだろうがそれを正式な書類で記録しなければならないのだ。


 一方で食堂ではファデルとソラが食事を行っていた。本来なら会議をきちんと見届けなければならない立場なのだが食欲には勝てなかった。なにより、

「終了報告は行っていないんだろ?」

「ええ、ロボット達が回収したという事は第二撃が予想されますからね」

 今回の事件の犯人達を取り逃がしてしまったので彼らが戻ってくるのを待つしかなかった。

「一応軍縮条約の規模はロボット兵半減にしてもらったので僕はこれから廃棄処分予定を使って防衛システムを組もうと思います」

「防衛システムか、本来なら情報局が組むんだがな」

「ご心配なく、そういうのは『黒船』で学ばされたので」

「そういえばそうか……。まあ俺は暇だし身体なまらせることだけしないようにするよ」

「何言ってるんですか、ソラさんにも一仕事してもらわないと」

 ファデルは不敵な笑みを浮かべた。


 会議は当然1,2時間で終わるようなものではなくカイリは席を外して城の中庭にいた。

 因みに会議の仲介人はいないがファデルがロボット越しにしっかり監視するようにしている。

 ルルフもカイリより先に席を外していたが中庭にはいなかった。

(フィン・ムドラ……)

 カイリは昨日の戦いを思い出していた。

(我ながらかなり酷い勝ち方をしてしまった、いやそれ以前のファデル殿との戦いだって……)

「お、いたいた。おーいカイリ君ー」

 呼ばれた方を見るとソラがいた。

「ソラ殿、どうかされましたか?」

「ファデル君に頼まれて君を鍛えに来たのさ。まあ俺教えるの下手なんだけどな」

「ファデル殿が? ……ソラ殿、ぜひご指南いただきたいです!」

「はは、まあとりあえず軽く手合わせしようか」

 数分後、カイリはソラに負けて跪いていた。

「はあはあ……、どうして?」

 最初のうちはカイリが優勢だった、目にもとまらぬ連続攻撃を繰り出した。ソラは防戦一方だったがある時のカウンターを境に一気に形勢が逆転したのだ。

「まあカイリ君みたいなスピードタイプはタフネスタイプの敵は相性悪いだろうしな」

「それだけじゃないんです……、ファデル殿はそうじゃない……」

「うーん、なんというかファデル君の戦い方はあまり参考にはなるようなものじゃないんだよな。彼自身本気になるようなことは少ないわけだし」

「本気じゃない!? 確かに私の攻撃をくらった時もかなり余裕があったような」

「ファデル君の場合は俺以上に戦闘中あれこれ考えているんだよ、本来なら余計な思考はなるべく削るべきなんだけどね。さっきも言ったがそんな戦い方はあてにならないんだよ、あくまでファデル君がそれをバランスよく成立させられてるだけであって」

「ではどうすれば……」

「そうだな、今の感じだとカイリ君には押しが足りないのかな」

「押しですか?」

「ああ、スピードだけではどうにもならない部類の押し……、ああやっぱり説明するのは難しいな。パワーとも違うし……」

 ソラはそのままぶつくさと独り言を吐き出す。

 カイリもカイリで剣を見つめながら『押し』について思考を巡らせていた。


 一ヶ月前にこの星、というよりはこの国に来訪して調査を行う予定だった双子の姉妹。

 レヒアとラミアは城の屋上で談笑していた。

 ファデルは彼女達に囚われていた経緯を聞いたが双子は覚えていないと()()()()()()

 実際は2人一緒でなければ本来の力が発揮されないから分断されたのだという事は理解していた。

 しかしその本質であるわざわざ城に囚われた理由までは彼女達にも分からなかった。

「ねえ、ラミア姉様。あのファデルとかいう男どう思われます?」

「そうねレヒア、あの指揮者気取りの女よりかはましなんじゃないのかしら」

 この双子の会話は要領を得ないとされて彼女達と会話するのを諦める者も多い。

 だが双子だからなのか互いの言いたい事や考えている事は不思議と分かるのでそれで困ることはないのだ。

「でも珍しかったわねラミア。あの男、私達に頼み事なんかするなんて」

「いいえレヒア姉様、あれは単なる社交辞令というものですわ」

「そうねラミア、今のところ私達は何もできていないものね」

「そうよレヒア、次にあの女が現れたら」

「「今度こそ分からせてあげないと」」

 双子の笑いはこだまする。



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