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螺旋の時間からの脱出ゲーム  作者: かみすけ
1章 転生初日
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螺旋の時間からの脱出ゲーム 転生初日編9話 (シリーズ9話)

「全て見ていたぞ。あいつの正体を暴くとは、ラルフ。貴様は危険な存在だ。」


そこにいたのは漆黒のマントで身を包み、禍々しいオーラを放つ者だった。


「ローアを放せ!」

ローアは首を絞めつけられている。


「それはできない。私は暗殺者だからな。」


それからのラルフは自我を失っていた。

ラルフの心には暗殺者への憎悪が時間が経つにつれ、増幅していった。


そして遂には地を大きく蹴りとばし、拳を暗殺者に向ける。

しかし、暗殺者の姿が消滅した。


「!?」

ラルフは言葉を発する時間は与えられなかった。

真後ろの気配を察したラルフだったが腕で首を押さえつけられた。


「さあ、どうする?ローアはもう意識はない。」


背中にとてつもない熱を感じる。

「熱い!う・・・ぐ。」


ラルフの背中から何かが一直線に侵入してくる。

皮膚、筋肉組織、臓器を突き破り、そのたびに熱せられた溶鉄を流し込まれる感覚がラルフを襲う!


そして腹の底から何かがこみあげて吐き気を催す。

口から出る深紅の液体。


ラルフは悟った。

それから背から滴り落ちる物となおも猛烈な熱の苦痛を与える物。


それが少しずつ理解できるようになる。

「もっと聞かせろ!貴様の魂の叫びを!貴様が奏でるレクイエムを!」


ラルフが着ていた服は前の方向にも膨らみ、血色が滲む。

そこで初めて熱は強烈な痛みと変化し、脳に刺激が走る!


「いだぁぁぁぁぁぁ・・・!」

ラルフの意識は遠のいていく。

それと同時にローアの姿も。


ラルフの伸ばす手をローアは払いのけ、先に行けと命令するように聞こえた。


激しい痛みは感じなくなり、視界は闇に染まり、感覚は何もなくなった。

それから肉体は全て再構成し、痛みは全くなくなり、感覚は転生した瞬間に戻る。


世界はまた全ての姿に戻る。

螺旋階段のように同じ風景、同じ人物が登場し、同じような会話を幾度も繰り広げる。


記憶はラルフだけに引き継がれ、それは階段を上がっていくことを意味するのだろう。

ならば頂上に一刻も早くたどり着くことをラルフは望む。


ラルフの視界が回復する。

「この草原、またループか。どうローアを守ればいいんだろ。」

二度襲ってくる脅威。

漆黒のマントに身を包む謎の暗殺者。


やつは二度目のループであのトカゲが化けた姿。

しかし、今は考えている余裕などない。

一寸先に迫る恐怖。


緊張で手足がふらつき、動きがだんだんぎこちなくなる。

「来る!」


口から飛び出しそうな程に大きく鼓動を打つ心臓を胸に手を当てて抑える。

深呼吸しても治まることのない緊張に四肢の神経が麻痺する。


それも全てあの羽ばたく音が聞こえてからだ。

後方からの風が恐怖を物語る。


しかし、それだけではない。

前方からもまた吹き付ける風が肌を撫でる。

「安心して。もう大丈夫だから。」

緊張の結び目はほどけた。


助けられるのはこれで最後にしようとラルフは心に決める。

ローアは火炎の息を突風を起こし、跳ね返した!


炎は草に引火し、たちまち炎上する。

そこにローアは追い討ちをかけるように旋風を起こす。

炎は風の勢いで激しさを増して赤い竜巻を引き起こす!


ドラゴンの肉体は黒く焦げ、やがて白い粉となって宙を舞う。

骨の髄まで焦げ尽くされ、草原には土がめくれあがっている。


緊張が抜け、ラルフはその場にひざまずく。

「大丈夫!?」

ラルフは全く意識する余裕はなかったが、これがどこから来たという質問をされるのを自然に防いでいる。


それに気がつくのは王都に着く直前だった。

それよりもラルフには最大の疑問点があった。


ローアは国ではどういった立場なのだろうか。

二人の暗殺者が狙う以上は相当高い身分ではないのだろうか。


だがそれを聞くタイミングも分からない。

今の考えられる打開策は城門の前で眠っている衛兵だろう。

鍵も閉め忘れる大ボケだ。


それに信じきっている城の連中もいけないのだが。

だからといってラルフが二人の暗殺者に警戒しろと言っても突然訪れた人を信じるわけがない。

あのボケ衛兵をたたき起こすしか方法はないと言える。


「さぁ、今回でこの忌々しいループを抜け出すぞ!」

ラルフは決意を改めて決めポーズをとる。


「なにそれ?」

少し時間が経過してからのローアの冷たいツッコミが入る。

「ごめん忘れて。」

そのやりとりは取り消してローアの後についていく。


この道も五度目。

ゲルト王国の城壁を目にし、改めて覚悟を決めて解決へとラルフは挑んでいく。


「ここまで来れば大丈夫よね?」

「ああ、だが気をつけろよ。」

ラルフは真剣な顔つきでローアに言い聞かせる。

そしてラルフはその場を去った。


ローアには理解できないことだろう。

ラルフしか知らない今とは異なる次元での出来事。


「━タイムループを脱出して目指せバラ色の異世界生活」

ゲルト王国のメインストリートは城門まで直結している。

その途中に下層への下りの階段があり、上層は奥の階段を登った先にある。


士農工商で言うところの上層は士、中層は農、下層は工と商に分類される。


中層から下層を見下ろすとゲルト王国の広さが分かる。

「━本当に戦争状態にあるんだよな?」

そう疑いたくなる程に人が溢れている。


ラルフが転生した意味はこの溢れかえる人々を守ることなのだろう。

沈みゆく太陽を見て城門へと走り出した。

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