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螺旋の時間からの脱出ゲーム  作者: かみすけ
1章 転生初日
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螺旋の時間からの脱出ゲーム 転生初日編4話 (シリーズ4話)

「新しい朝がきた~っと。」

ラルフが目を開けた瞬間、草原が広がっている光景を目にした。

理解が追い付かない。


昨日は下層での一騒動を終えて皆で仲良く暮らしていこうと思ったのだが。

これは転生した瞬間と同じ光景だ。


異世界転生ものあるある、死に戻りというやつか?

しかし、下層で英雄になったラルフが殺される理由がない。


後ろから地響きのような音が聞こえた。

ラルフはその時点で察した。

ラルフは胸が張り裂けそうだった。

それでも死んだらまたこの草原からになるのか。


だとしたら一刻も早く、できるだけ情報を集めて突破口を開くてががりを探りだしたかった。


「このままじゃ・・・。」

全身が鉄の塊になったように動かない。


「ギャアアアァァァァ!」

ドラゴンが急に咆哮する。


「まだここにドラゴンが残ってたのね!」

ラルフの聞いたことがある声だ。


風の刃が竜を切り裂いた。

「低級でよかった。」

「ローア!そこにいるのか?」


草原よりも一段と鮮やかなエメラルドグリーンの髪、日に反射して眩しい白銀の髪飾り、金色の双眸はラルフを映している。


「なんで私の名前を?」

ラルフは戸惑った。


確かにあの時は名をローアと言ったはずだ。

「え?俺のことわからないのか?」

「何言ってるの?初対面でしょ?」

ローアの受け答えにラルフは息を呑む。


「なぜだ!あの時の、あの一日は夢だったのか!?」

「あなたが何を言っているのかはわからないけどここは危険だからゲルト王国まで送ってあげるから。」

「あ、ああ。」


ローア、最初に会った時、それは胸が締め付けられるような思いで溢れそうになった。

そして今、全てがリセットされての再開。

今のラルフにはローアに照れている余裕などない。


なぜ時間が巻き戻ったのか。

このタイムループを脱出する方法はあるのだろうか。

そんな答えなどすぐに導き出せるわけがない。

ラルフは考えた。


頭の中で現状と昨日のことを必死に思い起こす。

感覚で歩を進めるラルフ。

気がついた時にはゲルト王国に着いていた。


「じゃあ私はこれで。」

「え、あ、ありがと。」

ラルフの声が語尾に近づくにつれて小さくなる。


ラルフはそれからゲルト王国の街の様子を見回す。

町並みは異世界あるある、西洋風の街。

レンガ造りの家や、白いコンクリートの家。

メインストリートは石畳で規則的に大小の石が並べられている。

奥には大理石の噴水があり、乾燥した空気に潤いを与えている。

そして人の姿に猫の耳が付いている人もたまに見かける。


「あー、やっぱいんのね、こういう人。」

「おい、そこの険しい顔した兄ちゃん!肉はいらないか?」

ラルフは急に声をかけられて少し戸惑ったがすぐに並べてある肉を見た。


「これがいわゆるマンガ肉ってやつか。」

「おい、何言ってるんだ?これこそ竜肉だよ。」

「え!」


ラルフは内から出る驚愕の声を抑えられずうっかり声を漏らす。

「ごめん、い、いいです。」

「なんだよ?竜肉って普通じゃねーか。」

「普通!?」

ラルフはその事実に驚く。


そして急いでその店から離れた。

ただ竜の肉と言われたら何とも思わないだろう。

しかし、ラルフは昨日タイムループ前に食べていたかもしれない。


そしてしばらくの時が過ぎ、暗い空に宝石が散りばめられたように星が弱い光を放つ。


夜だ。

「俺多分昨日だったら今下層にいるころだな。」

下層の階段から足音が聞こえてきた。


「誰か来る!」

下層に衛兵が来ることは滅多にない。

中層に用事がある人も昨日見かけたこともない。

そう考えているとき、足音の主が姿を現す。


ラルフの知っている人だった。

あの大男だ!


「なんだ?俺の顔になんか付いてんのか?」

ラルフは怯えながら必死に目で謝罪を訴える。

「おまえ、俺の邪魔するなら容赦しねーからな。」

「は、はい!」


恐怖のあまり、返事が大きい。

そして大男は城の方へ向かって行く。


人間とドラゴン族が戦争状態。

そしてラルフはあの大男の正体はトカゲのような姿をしていると知っている。


ラルフは物陰に隠れて大男を尾行する。

大男は周りこそ見回していたが、尾行に気づいた素振りは見せない。


大男は上層の階段を登り、長いメインストリートを歩くが、少しすると路地の方へ入っていった。

そこもラルフは見逃さない。


大男は別の姿に変えた。

黒いマントに身を包む、いかにも怪しい姿になる。

ラルフは尾行を続けた。


城門前、衛兵が二人。

しかし、二人とも眠っている。

「何やってんだよ。」

ラルフは小声でつぶやく。


いとも簡単に城の中に入っていく。

ラルフもしばらく待ってから城に入る。 


最初に来たときは無理やり引っ張られてたから気が付かなかったが城内は整っている。


それからラルフはあのドラゴン族の後を足音たてずに追う。


やがてあのドラゴン族はとある部屋に入った。

ラルフはそっと扉を開く。


窓から差し込む月の光にドラゴンの影。

そして月光に反射し、残忍に煌めく刃。

ナイフだ!


「あいつ!殺される!」

ラルフがそう思った瞬間、ナイフが振り下ろされた!

ラルフはすぐに目を塞ぐ。


それからまもなく、窓が割れる音がした。

急いでラルフは遺体に駆け寄る。


エメラルドグリーンの髪は所々赤黒い染みが付いている。

「おい!嘘だろ!?」

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