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螺旋の時間からの脱出ゲーム  作者: かみすけ
1章 転生初日
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螺旋の時間からの脱出ゲーム 転生初日編3話 (シリーズ3話)

20話までを毎日投稿します。


牢獄の中。

ひどく悲しく、寂しく、心細いか。

ラルフは恐れの感情と勝手に勘違いされ、なぜか牢獄にいれられた怒りの感情を繰り返す中ただ一人、助けてくれるだろう人がいた。


「ラルフ、ごめんね。私のせいでこんなになっているなんて。」

エメラルドグリーンの髪、白銀の髪飾り、金色の瞳は涙が波打つように震えている。


「ローア!?なんで!?」

ラルフの心の渇きが一瞬で潤う。


「私が勢いで国王様の所に連れていったからこんなに悲しい思いをして。」

「ローア、誰だって間違いはある。俺もあそこで空の上からなんていったからローアが勘違いで連れていった。おまえのせいじゃない。」


珍しくラルフはローアの前でまともに話す。

最もラルフに心の余裕があるわけじゃないからだろう。


「でも私はあなたに悲しい思いをさせた。だからね。」

ローアは懐から牢屋の鍵と思われる物を取り出した。

「待て待て!それ国王にバレたらどうなるんだよ!」

「いいの、お互い様よ。」

ローアは牢屋の鍵を開けた。


カチャッと音がした瞬間にラルフの全身の力も抜けていった。

「下層にいけば衛兵の目も届かないはずよ。」


またしてもラルフの腕をローアが引っ張って走る。

「丁度ここには衛兵の鎧の予備があるの。それを着れば外に出られるはず。さあ、着て!」


鎧はずっしりと重く手脚も動かしにくい。

「見つからないようにゆっくり歩かないと。」

ラルフはローアの後ろにくっついて後に続く。


ローアはなぜか城の構造を知っていて、なぜか遠回りをして出口を目指している。

ラルフはその疑問を懸命に抑えてローアの歩くペースにそろえる。


そして城門まで着いたとき、二人の衛兵に止められた。

「君達、どうして外に?」


ラルフは考えた。

ローアは答えると声の問題で女性だとバレ、女性で衛兵がいたかどうか議論になり、牢屋に逆戻りだろう。

ここはラルフが切り抜ける打開策を考えないといけない。


「大変だ!脱獄だ!」

城内から衛兵が駆けつけた。

ラルフはこれを利用するしかないと思った。


「なんだって?俺達は街を探る。」

ラルフは声を少し低くしてうまくやってのけようとする。

「よし、わかった。しっかり頼むぞ!」

中層の街で何かを探すような演技をして衛兵の目を欺く。


そして下層への階段を降りていく。

「ここなら衛兵が来ることは滅多にないよ。」


下層。

貧相な人が生活している。

ゴミの山にはハエが集っている。


そこに衛兵の鎧を埋めて下層の探索をする。

店の屋台には色や形の悪い果物や野菜が並んでいる。

そして上には中層の街が見えた。


「ところでなんで牢屋から出してくれたんだ?」

「なぜかわからないけどあなたは牢屋にいてはいけない気がしてね。」

ローアはなぜラルフのことを気にかけているのかなど到底理解できない。


しかし、何かを隠しているような雰囲気だ。

「あのさ、異世界ってあると思う?」

「異世界?あるわけないでしょ?」

召喚者はやはりローアではない。


「ローア、これからどうする?」

「ここで身を潜めて生きていくしかないわ。鍵を奪ったのも魔法で衛兵を気絶させたから。」

「そうだったのか。」


「聞きたいことだらけなんだけどさ。なんで天空人が必要なの?」

「今人間とドラゴン族の間では戦争が起こっててね。その戦争に勝つためにはレチルビアスっていう巨大なドラゴンを倒さないといけないんだけど、そいつは雷が弱点でさ。雷の魔法が使えるのは天空人しかいないとも言われてるんだよね。」

「なるほど。」


グゥ~。

ラルフのお腹が鳴る。


「お腹が空いたら酒場が一番手っ取り早いぞ!若いの!」

突然男の人にアドバイスを貰う。

「ありがと。じゃあ酒場に行くしかないな。」


通りを横切って酒場のゲートを開く。

「ごめんくださうぇ!」

「おい!気を付けろコノヤロー!」

ラルフは酒に酔った大男にぶつかった。


背筋が凍るような恐怖心にラルフは冷や汗をかく。

「テメェ状況が分かってるみたいじゃねーか、あ!?」

「ごめんなさい!この酒おごるんで許してください!」


勢いで棚の上にある酒の瓶を開けて大男に飲ませるラルフ。

その大男は喉をゴクリと何度も鳴らし、一気に瓶を飲み干す。


「あああああ。なんだよこのうすい酒はよー!もっと度数が高い酒はないのか!?」

この酒場の中では一番度数が高い酒。

人間が飲めるか飲めないかのギリギリをせめた酒だった。


「お客さん!そんなに酒に強いなんてさてはドラゴン族だね?」

店主が駆けつける。


「バレちゃ仕方ねえ。皆殺しだ!」

大男は二足歩行のトカゲのような姿に変えた。

そして背中にある剣を鞘から抜く。


「そうはさせない!」

ローアが回転する刃を放つ。


「ぬぐっ!」

トカゲの頬を刃が斬る。

傷からは深紅の露がこぼれ落ちる。


「おのれ!よくも俺の顔に傷を!」

ラルフは空の瓶をトカゲに投げつける。


トカゲはラルフの方に振り返った。

「テメェから始末されてーのか?」


ローアへの怒りに油を注ぐ。

怒り狂ったトカゲはナイフを構えた。


「時間稼ぎありがとう!ラルフ!」

「何!?」


ローアの杖が碧色に輝き、大剣に変形する。

「旋風一閃!」

大剣は肉を破り、骨格を刻む!

トカゲは力つきたようにその場に倒れた。


そのまま少しの沈黙が続く。

やがて一人がラルフを英雄だと言って万歳する。


「ラルフ!すごいぞ!」

「・・・なんだこれ?」

王族と民衆ではラルフの待遇が違う。

そしてラルフはその夜、下層の人々と意気投合して盛り上がった。


そのまま眠りに落ち、夜が明けた。

「これぞ異世界転生だぜ!街を救って人々にチヤホヤされてセレブを目指しますか~。」

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