表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

消える月

作者: まつり幸奈

何か変わるかと思った。もしくは、変えたかったのかもしれない。

弱い力で押し返されて、はっと我に返る。目の前には、ぽかんとこちらを見上げる、彼女の姿。大きな瞳に涙をいっぱいにためて、でもそれが自分のためのものじゃないと思うと、ひどく不愉快になった。

陸に上がった魚のように、ぱくぱくと言葉にならないまま口を動かす彼女。な、ん、で。さぁ、なんでだろうね。

つき離したのは俺、はじかれて離れていったのは彼女。

馬鹿なことをしているのは分かっている。脳裏に浮かぶのは別のひと。

何かを変えたかったのかもしれない。

すっと引き寄せられるようにもう一度口づけて、彼女の瞳に映る自分を嘲笑う。恋人がいて、大切な子がいて、それらをすべて壊して産声をあげたのは、歓喜。

この秘密を知るのは、世界にふたりだけ。一生抱えて生きていく。それを倖せと呼んでいいのか、俺には分からない。

愛も恋も知らなかったころ、無邪気に交わした左薬指の約束。あれほど脆いものはこの世にないだろうと思いながら、俺は思い出に蓋をして、そっと微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ