雨のあとは虹がかかるとは良く言うものの
地獄のような一晩だった。
飲んでるときに突然寝るし、露出多いし。
お姫様抱っことやらでベットに運んで、布団をかけるまでに俺がどれだけ理性と戦ったかあの女知ってんのかね。
まぁ、そこまで俺もクソじゃない、
本当に何もしていない。
目が醒めると先に彼女は起きていて、
目玉焼きとトーストなどなど、一般的な朝ごはんを作っていた。
「あ、おはよ」
俺を見て「おはよう」と言う。
会社以外でおはようと交わしたのはすごく久しぶりでまた不自然に留まった。
「うん、おはよう」
俺も言い返す。
彼女の作ったご飯を食べる。多分料理は、俺の方が上手い。
「私、今日仕事だから。」
「うん、まあ、俺も」
「あ、玄、シャワー浴びるよね?」
「うん、借りる」
「あ、服…あったかな…」
え?前の男のお古とか、絶対着たくないんだけど。男心わかってないな。
「あ!あった!」
いや、そこ、無くていいから。
「どう?これ?着るなら出すけど…?」
彼女のあのセンスにしては驚くほどお洒落な服だったから驚いた。いい服着た男と付き合ってたんだな。
「あ、でも、入るかなー。隆広やたらと小柄だからなー。」そう言ってその服を俺に当てがった。
「隆広いっつも服常備しとくの。いつ逃げて来てもいいように。喧嘩なんてやめなさいって言ってるんだけどね。あ、隆広はいとこね」
従兄弟かよ!従兄弟かよ!心の中で7回は言った。
「ちょっと俺パンツ買ってくる!」それだけ残してコンビニに出てきた。
同じパンツで二日はキツすぎる。
帰ってきたら、ちゃんと"隆広"の置いていった服は俺が着るように準備されていた。
シャワーから上がると、ひどい服を着た彼女がいた。
「あのさ…」変に神妙な面持ちだった。
「玄、今日行くとかあるの?」
うげっ、何にも考えてなかった。まぁいいや。
今日は晴れてるし。
「大丈夫、成るように成るさっ!」
我ながらアホくさい。
「もし行くとこないなら、いても良いからね。」
「え?」
「え?私に何もしないなら、窃盗もしないなら、だけどねー」って言って笑う。
いても良い場所がある、そこに誰かがいる、それってどれだけ素敵なことだろう。
「私、毎日帰り遅いから、もし本当にここにいるなら、鍵、渡そうと思って。」
馬鹿な子。俺が悪党だったら寄ってたかっていじめられてるぞ。しっかりしてほしい。
でも、その恥じらった顔が少しだけ愛しいかもしれないと思った。
「ありがとう、ここにいさせてもらうよ。」
そう言ったとき、彼女の顔が綻んだのは、俺にだけ見せる顔なのだろうか、なーんて、思ってしまう。
「じゃあ、俺に服選ばせて!」
「えっ!?えー!?玄センスなさそう」
「モモよりはある!」