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そして、また笑ってく  作者: ソラ
3/13

雨の日の匂いは嫌いではない②

夜遅くに帰って来た。


お腹が空いたけどうちの冷蔵庫にはビールしかない。流石に、食べなきゃ死ぬ。


今日は仕事が山積みでランチなんかしてる暇はなかった。だから昼抜きで終電がなくなる今まで

キットカットを少しつまみながら仕事していた。


だから、食べなきゃ死ぬ。



着替えをして、スーパーも空いていないのでコンビニへ行った。

小雨は降っていたが、コンビニは歩いて5分くらいだからさす方が面倒だと傘を持たずに行った。


明日の朝の分、と思って弁当1つ、おにぎり2つを買った。それからワインにキットカット、おっとっとも買い、そういえば予定日明日だったなと思い生理用ナプキンも購入した。


そして、コンビニを出よう、と、思ったら。

とてつもない豪雨に見舞われていた。

走れば5分、傘は面倒というのはまさに裏目に出た。

走って、コンビニを出た。



マンションに着くと、どこかホッとした。

家があることに。

庵野さん…マンションのフロントマンのようなスーツに身を包んだ管理人さん…みたいな(おじいちゃん)に話しかけるのは私のルールだった。

暇だろうから。話し相手になれれば良いと思ってここに引っ越して来たときから続いている。


「庵野さん、雨凄いですよ、帰るとき気をつけて下さいね」

そう話し終えてからソファーに男の人が腰掛けていることに気がついた。その人が、ひどく困っているように見えた。


「モモちゃん、ありがとね。で?羽柴さんはどうにかなりそうかい。」

私の「いえいえ」と男の人の「とりあえず」が重なって、私の小さい声は誰も聞いていないようだった。


エレベーターは行ったばかりのようで、なかなか降りてくる気配はない。

「今晩は会社で寝ようかと。」

ふあっ!?この豪雨で、会社まで行くの?

大変だぁー。私なら絶対運転したくないわぁ。

家入れないのか。可哀想な人。


「終電無いのになにで行く?」

へ?電車通勤なの?まさか…車、無いの?


「自転車で。」

うわっ、やば。流石にそれは、私が助けなければと思った。こんな雨の中でこんな暗闇の中で車の運転怖いけど、仕方がない。可哀想すぎるもの。


「何分、かかるんですか?」

自転車で5分程度なら私が気に止むことはないだろう。5分って言ってくれ…と願っていた。


「45分くらいですかねぇ…。」


あっかからんと言って立ち上がって外へ行こうと自動ドアを開いた男に、私は怒りが湧いて来た。

こと男、自分が言ってる意味がわかっているのだろうか。

死ぬかもしれないのに。こんな中。


私は咄嗟にその男の腕を掴んだ。


「馬鹿じゃないの!私が送る!」

背が高くて、細くて白い腕、前髪から覗く二重の大きな目が驚いた顔で私を見つめる。


「あの…震えてますよ?運転、怖いんじゃないんですか?」

この男、この大きな目は、私のこと、見透かしているのだろうか。まさか、エスパー??な訳ないか。

私は図星を突かれてしどろもどろした後に、

「そんなことないです!全然平気です!あなたに死なれるよりマシです!」

そう言った。


けれど、

「あなたの運転も俺は死ぬかもしれませんよ」

言ってやったりという顔でニヤッと私の方を見た。

なんて男なの?私の手を腕から離させて進もうとした。


「待って!わかった。わかったから!」

呼び止めたのは、私。だって明日のニュースでこの人死亡ってなってたら、流石に…ねぇ。



「私の部屋泊めるから!」


彼はもちろん、庵野さんも、誰より私自身が1番驚いていた。


「え?自分が言ってることわかってる?初対面の男と一晩過ごすっていう意味わかってるの?」

母親かと思うくらい心配そうに私を見た。


「うん。だから免許証と会社だけ控えさせて?強姦、窃盗その他諸々なんかあったとき速やかにできるように。」

彼はまた驚いた目で私を見た。

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