個人指導
「でっ何か質問は?」
狩虫さんが聞いてくる。
ぶっちゃけ聞きたいことだらけであるが、これは聞かないといけない。
「結局蟲人ってなんなんですか? いつも間にか人類と交じり合っていたような感じに聞こえましたが……」
「……」
『蟲人のルーツはよくわかってはいないわ。各地伝承に残るぐらいの昔から存在していたことぐらいしかわかていないわね』
花蜂先生はそう言った。
こりゃ気にするだけ無駄なようだ。
そんなことを考えていると花蜂先生は俺の右腕を取った。
「……」
『そんなわけで先生蟲使君に愛の個人指導がありますので今日は自習です! 以上!』
「……」
『ずるいよ! 花蜂先生私も蟲使君と一緒にお勉強デートしたい!』
「……」
『やれやれ、先生これは僕から見てもこれは職権乱用ってやつじゃないかな』
「……」
『そうですわ! いくらこの庶民が香しい芳香を放っているかろと言って、いきなり異性と二人きりなんてはしたないですわ! こういうものは――』
刺蜂さんは尻窄まりに言葉を放ちごにょごにょといった感じになってうつむいてしまった。
芳香ってのが俺から出ているってなんだそりゃ。
「蟲使君も気付いているだろうけど、ここにいる4人の好感度がやけに高いのは君の体から蟲人を魅了するフェロモンが出ているの」
そういえば昔から捕まえたカブトムシとかクワガタムシの虫カゴの蓋を開けても、全然逃げなかったけど。
夏場セミが俺の体の止まって鳴くことが、がしょちゅうあってうざいという俺の密かな悩みの原因はそれか。
「一応説明しておくけどここにいる蟲人は、花蜂は蜜蜂、蟻柄さんは蟻、蟷螂さんはカマキリ、刺蜂さんはスズメバチ皆虫としての特性が出せわよ。蟷螂さんの腕の鎌のようにね」
「……」
『人とうり説明は終わったわね! さあ行くわよ!』
「……」
『ずるい私も!』
椅子から立ち上がり俺の腰を掴む蟻柄さん。
ぎゅーと俺の腰に腕を回すが力が強くて痛い。
これが蟻柄さんの特製ってやつか。
「……」
『僕も参戦するね!』
参加を表明した蟷螂さんは、俺の左腕に体を密着させて体を上下に擦り付ける。
耳元で『どうだい僕の体は?』と言ってくる凄いエロいが、ここで愚息の起床は無しだぞ俺。
ほぼ初対面でそれはないからな。
こういうものは気付かれない様にするのが密かな醍醐味でもあるし。
「……」
『わ……私もですわ!』
そして刺蜂さんは俺の後ろに回って、胸の大きな双丘を押し付けた。
柔らかい感触と布越しに伝わる高めの体温が心地い
。
「はいはい皆落ち着いてね! いくら本能だといってもデレデレしすぎよ! 大惨事にならない様にまず蟲使君の人間性を見ましょう! 話はそれからです! あと花蜂普通に職権乱用よ!」
「……」
『だって! だって! お母さんとお父さんが早く孫が見たいいうんだもん!』
「だからって自分の学校に在学中の生徒を夫として親に紹介したら大惨事よ! それぐらい考えなさい!」
しゅんと肩を落とす花蜂先生。
いちいち行動が可愛い人だな。