期限
「花蜂! 様子を見に来ればなにやってるのよもう! 女子高生に張り合うなんて自分の歳考えなさい!」
誰か思えば狩虫さんのようだ。
正直助かったけど。
「……」
『だって狩虫ちゃん! 私だって蟲人だもん! 仕方ないじゃない!』
「だからって歳が十歳も違うのよ! 仮にアンタ先生でしょーが!」
俺が16だから先生の年齢は26か。
知ったからと言って特に何もないがとりあえず理解した。
「……」
『えーいいじゃない! 私だって清い体なんだから!』
「昔から蟲使いの男性と結婚したい! ってこじらせていたの知ってるけど。ここまでとは……まあいいわ。ちなみに蟲使君的に花蜂はありなの?」
「普通にありですけど」
「……」
『ホントやった!』
口元に手をやり顔をほころばせる花蜂先生。
やっぱり美人には笑顔ですよ。
「いいのこの子かなりこじらせているわよ? 今でもぬいぐるみを抱いてないと眠れない子よ?」
何それ可愛い。
年齢的にギリギリのラインでだけど。
「……」
『ちょっと狩虫ちゃん! やめてよ!』
「まあいいわ、親友の幸せのために黙認するわ! 当然深く手を出したら花蜂と即入籍よ! 聞いた思うけどこの3人も同じだから」
聞きましたよ。と言おうとすると。
「……」
『じゃあ! 話を戻すね! 蟲使君! 誰を選ぶの? 私? それとも』
「……」
『僕だよね? 僕は好きな人に尽くすタイプさ!』
「……」
『蟲使君……私みたいなおばさんは嫌い?』
「……」
『私をお選びなさい! 貴方で我慢してあげる!』
「どうやらさら刺蜂ちゃんも蟲使君を気に入ってくれたようね。蟲使君がいるんだからここを辞めないわよね?」
「……」
『遺憾ながら仕方ありませんわ。お父様と約束してしまった事柄ですからね。決してこの下民を一目見て気になってなどおりませんわ!』
「……」
『そんなわけで誰を選ぶの?』
4人の視線が交差する。
改めてじっくり4人を見つめた。
蟻柄さんは胸はそこそこだけど元気いっぱい健康的な魅力と明るいな性格が魅力的だ。
次に蟷螂さんほっそりしたスレンダーな体の曲線美は、思わず見とれてしまいそうだ。
僕っ子なのもいい。
刺蜂さんは青い目と金髪が綺麗で、大きな胸が特徴的ツンデレお嬢様キャラとか何のご褒美か状態だ。
花蜂先生は大和なでしこって感じな清楚な印象を受ける。
パジャマ姿で大きなぬいぐるみなんかを抱きかかえている姿を想像すると可愛いな。
大人の魅力の加点もある。
まさに甲乙つけがたい。
それにこういうものはじっくり選ぶべきだような。
手を出したら即入籍じゃ此処は慎重に。
「正直にいうと今は選べません」
蟻柄さんが何かを言う気配を感じ先手を打つ。
「皆俺にもったいないくらい魅力的ですけど。生涯のパートナー選びとなるもしれないので、じっくり見極めさせてください!」
何故か頭を下げてしまい。
冷や汗がじわり背中に滲む。
これ見ようによっては交際を断っているように見えるのでは?
「安心したわ」
安心した? 予想外の狩虫さんの言葉を反芻する。
「この場面で誰かを選んでいたら、私は貴方を見損なっていたわ。
これだけ可愛い子がそろっての誘惑を振り切ってじっくりこの子たちを見極めようなんて、
性欲の権化みたいな子じゃなくてよかったわ。君いい子じゃない!」
俺は言葉を口に出そうとすると。
「でも詰めが甘いわね期限を設けてくれる?」
「期限ですか」
「そう期限こんなのはどう? 4人の誰かの体に手を出すか、卒業の3年間までに答えを出すっているいうのは」
3年か生涯パートナー選びとしては少々短いが、ラブコメみたいで楽しそうだ。
「その顔は了解とっていいわね? じゃあ4人に言っとくけど無理やりことに及ぶのは無しよ? 蟲使君が自分から襲ってこないとノーカンだから」
「……」
『これって……』
「どう花蜂? 貴方の大好きな乙女ゲーの設定と同じにしてみたわよ。これならやりやすいでしょ!」
「……」
『ありがとう狩虫ちゃん! 絶対蟲使君落としてみせるよ! 結婚式特等席で呼ぶね!』
「……」
『なるほど僕たちの楽しめそうな提案だね! アントちゃん』
「……」
『うん! そうだね鎌奈ちゃん! 蜂花ちゃんは?』
「……」
『いいですわよ! どうせ勝つのは私ですわ!』
やぱっりまだ勉強が足りないな。
同じような展開だし。
まだまだ私の伸びしろはありそうだからじっくりいこう