頭の〇〇
「……」
『皆さんそろっていますね! 今日はこのクラスの新しく加わる生徒を紹介します。蟲使君入ってきてください』
ガラガラと教室の戸を開け恐る恐る教室に入った。
教壇に立つのは二十代前半に見えるの黒の長髪と大きな胸が特徴の美人教師花蜂蜜さん。
教室を見渡すと3人の女子生徒が見える。
一人は金髪の長髪の左右をドリルのように丸め気が強そうな印象を受ける女子生徒。
もう一人は一見男に見える短髪の中性的な顔の女子生徒。
最後の一人は見覚えのある大きな目が活発な印象を受ける女子生徒。
この教室にいる4人とも学校に一人でもいれば、皆が皆学園のアイドルになれるほどめちゃくちゃ可愛い。
でもあれ作り物に見えないんだが。
俺がそれ凝視しているとピクリと頭のそれが動いた。
慌てて目を離すと活発な印象を受けるその女性と目があう。
ニッパと笑顔の花を咲かせた。
この笑顔を見るのは二度目だ。
「……」
『自己紹介してね蟲使君』
「えっと……俺は蟲使操よろしく」
「……」
『皆さん蟲使君はなんと蟲使いの血族の出す。これが私たちにとってどういう意味か皆さんなら分かりますね?』
「……」
『だとしても認められませんわ! こんな庶民が――』
そう啖呵をきるツインドリルだが俺の顔を見て頬を染めてうつむく。
「……」
『ふーん! これが噂の蟲使いか! 流石の僕もドキドキしてきたよ!』
「……」
『ねーそうでしょ! 鎌奈ちゃん! 私も蟲使君と話す時ずっとドキドキしてたんだから!』
「……」
『アントさん! こんな下民によく欲情できますわね!』
「……」
『蜂花ちゃんは蟲使君を見てこのときめきを感じないの?』
「……」
『別に感じないわけでは……何を言わせるのよ!』
「……」
『全く蜂花ちゃんは素直じゃないんだから! だったら私が蟲使君貰っていいよね!』
「……」
『それは困るよアントちゃん。僕的にもこんなに興味をそそられる異性は渡したくないな』
「……」
『駄目よ! 私に譲りなさい! この気持ちを静めるための研究目的よ! 絶対……気になってるわけでありません事よ!』
「……」
『私だって我慢してるの! 自己紹介初めてね!』
「……」
『じゃあ私から! 私は蟻柄アントだよ』
そういって笑顔の花を咲かせた。
「……」
『僕は蟷螂鎌奈さ、よろしく!』
腕に付いたそれを見せつけように腕を上げた。
「……」
『私は刺蜂蜂花ですわ』
そういって刺蜂はそっぽを向いてしまう。
ひととうり自己紹介は終わった。
誰一人表情は変われど口は全く動いていない。
それでも会話が成立しているのが凄いところだ。
それにしても教室に4つしか机がないのはある意味贅沢だ。
まあそれも分かる。
だって彼女達全員頭に可愛らしい虫のような触角を生やしているのだから――。
高校入学から僅か二日俺の新しい高校生活はそうして始まった。
ヒロインの頭に映える触角は名前のとうりの虫の触角をデフォルメした物です。




