あーん
「……」
『もうこんな時間だね! 食堂行こ!』
それから皆とたわいない会話をして、お互いの事を語り合った。
なんでも蟻柄さんの両親は蟲人ではなく普通の人間で親類のの蟲人の血が色濃く出たそうだ。
たまにそういう事があるそうだ。
蟷螂さんの母親は蟲人で父親は虫使いでもなく普通の人間とか。
刺蜂さんは自慢げに蟲人である母親を蟲使いの力を持つ父親を自慢していた。
刺蜂さんの話だと女の人だけの蟲人にとって虫使いの異性のパートナーを持つことは、羨望の的であり夢であるそうだ。
両親に憧れて刺蜂さんは虫使いの異性をもとめていたのだろう。
全員の親は未だラブラブらしい。
蟲人は皆美女ぞろいらしいから、意思疎通が多少できなくても男の方はベタ惚れなのだろうな。
当然俺も両親と家族の話をした。
しかし、俺の家庭はいたって普通なので特に面白みはない。
だが、それが珍しいのか3人は興味ありげに聞いていた。
それで思い出したが爺ちゃんが、何か不思議な仕事をしている両親に聞いた覚えがある。
それが何か引っかかる。
でもどうしても思い出せない。
そんなもやもやを抱えたまま皆で食堂に向かった。
「……」
『はい! 蟲使君あーん!』
「……」
『僕も負けないよ! 蟲使君あーんさ!』
「……」
『ここは高貴なる私のあーんを受けるべきですわ!』
料理を突き刺したフォークで制空権を争う3人、食堂についてメニューを注文したらこのありさまだ。
蟻柄さんはハチミツをたっぷりかけたパンケーキ。
蟷螂さんはサイコロステーキ。
刺蜂さんは見るからに高級そうなメロン。
それを一口だいにきりわけてフォークで刺している。
どれもこれもお世辞じゃなくて本当に美味しそうだ。
こういうものはほとんど食べたことがないがなんか艶がある気がする。
それにこの食欲をそそる香しさは、ガツンと食欲を刺激する。
「……」
『ねーねー早く食べてよ!』
「……」
『当然僕だよね?』
「……」
『私ですわよね?』
「……」
『ここは譲ってよ! 私蟲使君に初あーんしたい!』
「……」
『それは難しい相談さ! 僕だってずっとらぶらぶの両親をみてきたんでね! だから噂のあーんをやってみたいのさ! 流石に親友の頼みでも聞けないよ!』
「……」
『ここは私に任せなさい! 私だってお母様とお父様みたいにあーんがしたいですわ!』
「……」
『面白そうな事やってるじゃない! 私も混ぜて!』




