後回し
「……」
『げっ狩虫ちゃん』
「げっじゃないわよ! 目を離したら全くもう! 蟲使君の報告書提出は明日だっていってるでしょ!」
「……」
『えーやっと旦那様候補見つけたのに~』
「なのに~じゃないわよ! あんた自分の立場考えなさい! さあ行くわよ!」
「……」
『そんな~蟲使君とのファーストキスが~』
「はいはい、仕事の後でね! じゃあみんなこの子連れていくから!」
そういって悲痛な声を上げる花蜂先生をずるずると引きずり視界の端にフェードアウト。
残された俺たちに微妙な空気が流れる。
全く花蜂先生の鬼気迫る食いつきには、軽い不安感が残る。
俺かは分からないが花蜂先生を娶る男は苦労しそうだな。
「……」
『でどうする? 僕的には後日でもいいけど』
「……」
『そうだね、花蜂先生をのけものにするのは可哀そうだし』
「……」
『しかたありませんわね! ライバルとは公平に戦うべきですわ』
「……」
『蜂花ちゃんついに認めたね! でも僕は負けないよ!』
「……」
『私も負けないから!』
「……」
『べ……別にそんな意味じゃありませんわ!』
「……」
『どちらでもいいさ! 僕が凄いと噂の蟲使いの男の子とのアバンチュールを頂くだけさ!』
「……」
『ずるい! 鎌奈ちゃん私もアバンストなんとかしたい!』
「……」
『アントちゃんアバンチュールさ! 恋の冒険だね!』
「……」
『いいねそれ! 私蟲使君と冒険してみたい!』
俺に抱き付く蟻柄さん。
それに対抗意識を燃やしたのか蟷螂さんが。
「……」
『ずるいよ! アントちゃんだったら僕は!』
するすると右足の靴下を脱ぎ。
立ち上がって右足で俺の頬を撫でる。
蟷螂さんの足すべすべで柔らかく無駄な肉付きがない脚線美の足は思わず撫でたくなる衝動にかられるが、そんなことをすれば一歩間違えばお縄につきかねない。
逮捕をお縄と古臭く言ってみた。
まぁ時代背景が違うだけで同じような意味だが。
それをみた刺蜂さんは。
「……」
『…………』
何故か無言だった。
いつものツンデレが出るかと思ったのだが。
暫く刺蜂さんを見つめていると急に赤くなる。
「大丈夫? 刺蜂さん」
声をかけたが刺蜂さんは、漫画のように頭から煙を吹いて倒れてしまった。




