初めてのマッフ
「……」
『おー! これがハンバーガセット! 美味しそう!』
と蟻柄さん。
本当に初めて見たって感じだ。
「……」
『肉に艶がないけど。そういうお肉なのかい?』
一方の蟷螂さんはハンバーガーのパティに不満なようだ。
気持ちはわからなくないけど。
そういうお肉だからなその事を伝えると『ふーん』と物珍し気にハンバーガーを観察している。
そして刺蜂さんだが。
「……」
『ふん! 芋を揚げただけなんてとんだ下民の食べ物ですわね!』
と不満げだ。
さっきまでメニューの映ったスマホを凝視して頼むモノをじっくり選んでいたのにな。
刺蜂さんつんつんしているな。
しかし、その道の業界では美人の強きはご褒美というし、確実に需要があるからな。
それはそれでいい。
俺が三人の代わりに頼んだメニューはダブルチーズバーガーセットドリンクには甘いクリームソーダ。
チョコパイ一人二個づつ。
なんでそのチョイスかというと、結局刺蜂さんは何を注文するか決められず。
残る二人は俺に一任してきたわけだ。
それでこれだ。
マッフナルドのバーガーの肉は単品では美味しくないからな。
チーズ二枚も乗っているし初心者向きだと思う。
そして甘いものという事で無難にチョコパイ、そして独断と偏見でクリームソーダ。
甘い飲み物といえばこれだ。
コーラはあの刺激が苦手な人もいるし、刺激が弱めだからな。
そして俺たちはテーブル席に陣取っているわけだ。
「まぁ食べようぜ値段の割には旨いからさ!」
「……」
『じゃあ私このパイ食べる! 美味しい!』
「……」
『それなら僕はハンバーガーかな、うん肉の質は良くないけど。中々』
「……」
『では私はこの揚げ芋を、料理とは言えない程お粗末ものですから逆に興味がわきましたわ』
そしてフライドポテトを一口。
するとわなわなと震えだす。
どうしたんだと思った矢先刺蜂さんは俺を睨みつけ。
「……」
『応えなさい! これは何?』
「何ってフライドポテトだけど普通の……」
「……」
『これが普通……この味でこんな庶民の店で……』
「蟷螂さん刺蜂さんどうしたの? 口に合わなかったのかな」
「……」
『違うだろうね。その逆さ刺蜂さんの家はお金持ちだからね。普通の食事には慣れていないのさ』
そうかじゃあ。
「刺蜂さんポテトにはその赤いソースをつけても美味しいよ」
とトマトケッチャップを勧める。
刺蜂さんは無言でポテトを貪る。
いいとこのお嬢らしく上品に食べてはいるが、普段のつんけんした表情と違いとても緩やかな顔だ。
「……」
『ほんとだ美味しいねこれ! 蜂花ちゃんがはまるのわかる!』
「……」
『ホントだね! ちょっと脂っこいけどこの感じが癖になるじゃないか!』
「気をつけてよ。フライドポテトカロリー高いから」
「……」
『大丈夫さ! 僕たち蟲人は太りにくいからね! いくら食べでも僕の脚線美は健在さ!』
と蟷螂さんは自慢の生膝を上げアピールしてくる。
「……」
『そーなんだよ! 私達はね! だからあんまりダイエットしなくていいの! 凄いでしょ!』
なんというスペック。
女の子憧れの的の体質だとはすげーな蟲人。
それで皆美人って反則だろ。
このことが前の学校の連中にしれれば何を言われることが。
あいつら皆モテたがりだからな。
中学時代モテ学研究部という部活を立ち上げようとしたっけ。
当然学校側に拒否されたが。
あいつら友人としてはいい奴らだが、いろんな意味でぶっ飛んでたからな。
まぁもう会う事はないだろうが。
そんなこんなで三人の初マッフナルドは大好評で終わったのだった。
ポテトにハマってもどこぞのポテキニエルフのようヒロインが身に見えるレベルで太ることはないです




