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80 祐介、桃山荘へ行く

 祐介が、すぐに詩織に電話をかけると、ただ、家政婦のような人間が電話口に出て、お嬢様は自宅にいませんと告げたのだった。どこにいますかと尋ねると、彼女は上京した婚約者と会うためにホテルに向かったと言った。祐介は、その相手が、月島嶺二だとすぐに分かった。

 祐介は、構わずにそのホテルに向かうことにした。ホテルの名前を尋ねると、文京区の桃山荘だというので、祐介は、すぐに支度をはじめた。

「英治、行ってくるよ」

「白石詩織に会いに行ってくるのか?」


「うん。文京区の桃山荘にね……」

 そう言ってから祐介は、すみれの方に歩いて行って、

「これから、白石詩織に当たってみます。英治が残るから大丈夫だと思いますが、一人で出歩かないようにして下さい……」

 と告げると、すみれは、

「容疑者に直接当たるんですか? 危なくないですか?」

 と心配そうな声を出した。


 すみれは、父、拾三が斬りつけられたということもあったので、祐介が白石詩織に会うということが、心配でならなかった。もしも、彼の身に何かあったらと想像するだけで、落ち着いて、探偵事務所に引っ込んでいらない気がしたのだった。

「大丈夫ですよ。犯人と直接対決するわけではありません。白石さんのあの日のアリバイを尋ねてこようということと、アリバイの証人の連絡先を聞いてこようとしているだけです……」

 すみれは、十分危ないじゃないか、と思ったが、それもしなければ事件の捜査にならないだろうということもよく分かっていたので、それ以上は尋ねなかった。

「じゃあ、未空、行ってくるからね」

「うん。お土産、買ってきてね」

 未空は、案外けろっとしている。祐介は、この妹を可愛らしく思ったらしく、にこやかに頷くと、コートを羽織って、外に出て行った。

 すみれは、その後ろ姿を最後まで見つめていた。あのクリスマスイブから一週間が経ったこの大晦日の夜、祐介がどこかに行ってしまうような不安を感じていた。もう、すみれにとって、祐介は赤の他人ではなく、運命的な人だった。その祐介の身に何かあったら、と思うと、気が気でなかった。

 

 祐介は、文京区の桃山荘に向かう自動車の中で、あることを考えていた。それは、父親のことだった。父親は、谷口刑事の殺人事件の捜査をしていた。そして、祐介と同じく、現場の机の中から見つかった白石詩織の写真から、月島嶺二に白羽の矢を立てていたのではないだろうか。そして、父親は殺された。それは口封じだったのではないか。

 ……祐介の父親は、山形の実家の一室で、撲殺されていた。

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