ぱいぱーい
「俺が同性愛者が異性愛者かなんざどうだっていい。何が言いたいかっていうとさっきの事を女の子に話すと最低だの変態だの罵倒されるが俺は最低でも変態でもない!男として当然の本能だ!よって!俺は!悪くない!お前も!悪くない!!」
「な、なるほど」
「なるほどじゃないです。中原様、惑わされないでください。」
「男がエロが好きで何が悪い!おっぱいが好きで何が悪い!」
「え」
「お前は変態だ!復唱!」
「お、俺はへ、へんたいだ…」
「何言わせてんですか!」
ヒートアップする変態2人。
「はい!おっぱいコォォォオル!!!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!」
「お、おっぱい、おっぱい、おっぱい」
覚えてるだろうか。ここはドラマの撮影にも使われた薔薇咲き誇る名門私立学園の屋上である。
「話がずれてるじゃないですか!何の話をしてんだあんたは!!中原様もなに流されてるんですか!」
「いぇぇええええい!!ぱいぱぁぁぁい!」
「中原様ぁぁぁあああ!!!」
コールをやめない王子様()の胸ぐらを掴んでグワングワン振り回すお付きの子。最初より扱いが雑になっているのは気のせいじゃないはずだ。
「ま、コールは冗談として」
「冗談にしてはたちが悪すぎます!」
殴られた頬を親指で拭ってえっこいしょと立ち上がる。
「セックスをバカにする奴が嫌いだってのは本当だぜ」
フと、前世を思い出す。俺の腕の中でまるで世界で一番幸福だと言わんばかりに泣きながら微笑む愛しい女を。セックスが卑しい行為ってんならあの忘れられない夜も卑しいことになるのか。そんなの、
「悲しいじゃあねぇか」
「……何か、あったのかい」
コールをやめた王子がスと俺を見つめる。若さゆえのまっすぐな視線に耐え切れず俺は俯いた。白く柔らかな足とローファーが視界に入る。
「……俺じゃねぇ」
嘘はついてない。この経験をしたのは『公園寺愛里紗』ではない。
「馬鹿な男が居たんだよ。そいつが言ってたんだ。愛しい人と繋がれた時にゃ、あまりの多幸感に泣いちまったんだとよ」
「………」
視線を上にそらせば馬鹿げてるぐらい青い空が広がっている。ザァッと風が心地よく眼を細める。
「その相手の女は死んじまったよ」