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女王様とドM男

作者: 徳坂 新太郎

ある所にドM男と女王様がいました。

「ほらほら!もっと欲しいんじゃないの!? 鳴きなさい!喚きなさい!すがりなさい!!」

バチンッ!バチンッ!

「ブヒ〜!!!!滅相もございません!!!いや、しかしもっと!!!もっとハードなのを下さいぃ〜!!!」

バチンッ!!!バチンッ!!!!!

ーーー。

女王様は城に住んでいるので、優雅な暮らしをしていました。

しかしある時、城の召使いたちがこんなことを言い始めました。

「最近の女王様は人を人と思っていない。いずれ我々もあのドM男のように家畜同然に扱われる。辞めるなら今だ。」

これにはたくさんの召使いが賛同し、召使いたちは一斉に城を出る計画を立てました。


ある日、女王様が起きると城があまりにも静まり返っていました。

「…? どうしたのかしら…?」

食堂に出るといつものように豪勢なビュッフェが展開されている…のではなく、そこには皿1つ並んでいませんでした。

異変に気付いた女王様は必死で声を張り上げ、召使いたちを呼びました。

「なにしてるの!?あなたたち!早くでてこないと即刻クビにするわよ!!」

その声は城中にこだまし、返事が返ってくることはありませんでした。

女王様はテーブルの上に1枚の書き置きを見つけました。

「女王様、ご無礼を承知の上で、召使いを代表させて筆をとらせていただきました。 女王様の最近の我々の扱い方、それはそれは酷いものでした。毎日泣きながら職務にあたっている者もいました。皆の不満は溜まりに溜まり、城を出ようという決断に至りました。 ご勝手をお許しください。食事は食料庫に数十年分保存のきくものをご用意してありますので、召し上がってください。今まで大変お世話になりました。

召使い代表」

突然のことに頭が回らない女王様は手紙を握りしめると、奇声をあげました。

「イィアァァアアアァァァーーーー!!!」

静寂が城内を包み込み、徐々に女王様も事の次第を飲み込んできました。

「みんな、みんないなくなってしまった… 私は、私はただ、女王として振舞っていただけなのに… なんで…」

悲しみに打ちひしがれた女王様の頬には光り輝く雫が滴っていました。

「仕える者のいない女王などもはや女王ではないわ… 私はこれからどうしたらいいの…」

そんな時でした。

静寂を切り裂いたのはゴム状の何かで、壁を殴打する音でした。

バチンッ…!バチンッ…!!

その音は遠くから、そしてどんどん近づいてきます。

「誰…?誰なの…?」

バチンッ…!バチンッ…!!

「そう、わかったわ。もう女王ですらない私を懲らしめに来たのね。いいわ。何でも受け入れましょう。それが私のできるせめてもの贖罪。」

バチンッ…!バチッ…

音が止み、闇から現れたのは一糸纏わぬ姿で立ち尽くすドM男でした。

「女王様。それは違います。あなたは女王として完璧に振舞っていた。あなたが召使いや下々の民の心を理解できないのと同様に、彼らや私にあなたを理解することなどできるはずがないのです。つまりこれはなるべくしてなったことと言えます。」

滴っていた雫はいつしか止まっていました。

「なら… なぜあなたはここに残ったの…」

充血したその目は血走り、今にもドM男を射抜きそうな勢いがありました。

「私にはあなたを理解できないということが最初からわかっていました。そのうえであなたを女王たらしめる存在として私は存在していました。そんな私が今になってあなたに愛想をつかすなどもはや何の意味も持ちません。私はこの身をあなたに捧げると誓ったのです。」

止まっていたはずの雫が、ダムが決壊したかのように溢れてきました。

「ちょ… そんなバカな話が… あるわけ…」

止めようとしても止まりません。流れ出す雫は女王様の足元に池を作りました。

「女王様。私はここにいます。そしていつまでもあなたと共にあります。何度でもやり直しましょう。女王様はあなたしかいないのです。」

流れ出す雫は女王様の視界を奪い、もはやそこがどこなのかすら曖昧にしてしまいます。

「さぁ、手を出して、あなたにはこれがお似合いです…」

視界のぼやける中、その手に渡された物は、長年愛用してきた躾用のムチでした。

それをギュッと握りしめながら、顔をあげた、そこにはかつての女王様がいました。

「フフンッ。いいわ… そういうことならしてあげる。 お前のような家畜がッ!!私に提言することなど2度とないほどにねッ!!!!!!」

バチィィィインッッッ!!!!!!!

それは今日発せられたどの音よりも大きく、どの音よりも軽快でした。

「ブヒィィィィイ〜〜〜!!!!!これです!! これなのです!!!!!さぁ!!もっと!!!私を!!!!!!蔑んだ目で射殺してくださいぃぃ!!!!!!」

バチンッ!!!バチンッ!!!!!バチ!バチ!!バチィィィインッッッッ!!!!!!!!


その音は何度も何度もこだまし、途切れることはなかったそうな。


〜end〜

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