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部活

るんるんるん♪

健治は毎日学校が楽しみでならなかった。

学校へ行けば必ず由里子と会える。


教室にはいつも、お調子者の自分を待っているクラスメイト達がいる。

その中でも、やっぱり由里子が一番自分のことを待ってくれているような気がする。


中学時代よりも、由里子と仲良くなれた気がするし

由里子はさらに可愛さが増して見える。

健治は、俺とウハウハな関係になるまでそう時間はかからないはずだと確信しつつあった。


「あ、健治君おはよう!」


教室に入ると一番最初に声をかけてくれる由里子に、健治はキュン死しそうになる。


「由里子ちゃん、おっはよ~☆」


健治はご機嫌だ。


「あ、健治君だ。おはよう!」

「おはよう、健治!」

「健治待ってたぜ。」


クラスメイトが次々に健治に声をかける。

間違いない、俺は皆の人気者だ。


「すいませーん、今日数学の宿題忘れました、中山先生。」


こうして、健治にモノマネを振ってくるヤツもいる。健治に中山先生のモノマネをリクエストしているのだ。


「いやいやいやいや、ちょっと待て~、お前こないだも忘れただろ~、ちょおっと待て~、俺は数学じゃなくて英語の教師だ~。ちょおっと待て~、助動詞のときは死んでも動詞は原形だろ~、ちょっと待て、ちょっと待て~。」


健治が中山先生の口癖を真似れば、教室中に笑いが起きた。


「健治ってやっぱすげぇな!」

「健治君面白い!」

「お前芸人になったら絶対売れるよ!」


皆して健治を褒める。最高の日常だ。


「ねぇ健治君、」


由里子が話しかける。


「ん?何?」

「健治君は部活、もう何に入るか決めた?」

「あぁ、俺?中学校のときと同じ、陸上部にしようかなって。」

「え!?」


由里子はとんでもなく驚いた顔をした。

健治は中学時代、弱小の陸上部に所属していた。なんとなく走るだけでいい。練習をサボって、いつも部員を笑わせることしか考えず、先生のモノマネをやって過ごしていた。

高校でも同じように、ただ、なんとなく走ってあとはサボろうと思っているのだ。


「健治君、あたしの口から言うのもなんだけど、ここの陸上部はやめといたほうが…」

「え、なんで?」

「健治君知らないの?この高校の陸上部は駅伝で超有名なんだよ!」

「へえ。」

「『へえ』じゃないよ!レベルが高すぎるの。陸上部に入りたくてこの高校に進学した人がどれだけいると思ってるの!?」

「レベルが高いってことは…」

「厳しいってことだよ。」

「それじゃあ…」

「顧問はあの怖い体育教官の塚田先生だし、部員男子は全員丸坊主にしなきゃいけないし、恋愛まで禁止されてるって話だよ。」

「れ、恋愛禁止だとぉ!?」


思わず、健治は大きな声を上げた。

それは、まずい!これから俺と由里子ちゃんは友達以上の関係になり、ウッハウハの恋愛生活を送るというのに、恋愛禁止なんてありえない。


いくら厳しいとはいえ、そんなことは、そんなことは!許されないッ!!!!


健治は、なぜ由里子が陸上部はやめたほうがいいなんて言っているのかよく分かった。

由里子ちゃんも、俺との恋愛Daysを心から楽しみにしてくれているのだろう。俺が恋愛禁止の部活に入部するのを阻止したかったに違いない、そう思った。


「そうか、分かったよ由里子ちゃん。そこまで言うなら陸上部はやめておこう。」

「いや、ごめん。ただ、健治君には向かない部活なんじゃないかと思って…。おせっかいだったかな?」

「そんなことはないよ、由里子ちゃんの気持ちが心の奥まで届いたぜ。」

「ならよかった。」

「由里子ちゃんは、もう部活決めたの?」


由里子は中学時代、放送部だった。由里子の、透き通った綺麗さに可愛さが加わった特徴的な声でのアナウンスは、健治の心をいつも揺さぶっていた。

また放送部なんだろうな、そう思ったときだった。


「あたし、『モ部』のマネージャーやろうかなって思ってて。」


『モ部』?聞きなれない言葉だ。『モ部』ってなんだ?

モデル?モーグル?モーニング?モミアゲ?も、も、も…

健治は『モ』のつく言葉を探すがピンとこないでいた。


「健治君、もしかして『モ部』も知らないの?」

「ああ…うん。」

「健治君、好きそうなのに。」

「え?俺が?」

「うん。そうだ!今日の放課後、一緒に見学しに行かない?まだ部活決めてないんだし、ちょうどいいじゃない!」

「いいけど。」

「もし気に入ったら、健治君も『モ部』入りなよ!ね!今年は入部希望者が少ないって聞いたし。」


由里子ちゃんと同じ部活か…、悪くないな、と健治は思った。

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