表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

白色赤頭巾は猫と会う

受験会場から帰り、自室につくなり疲れた体を休めるためにベッドに突っ伏す。


雪見雪は疲れていた。

何故か帰りに良く分からない男の子(なんか危ない)に絡まれ、良く分からないままツッコミ続けた結果である。


取り敢えず仰向けになり、天井を見つめ物思いに耽る。


雪は素の自分を出すのが怖かった。

それは容姿と中身のギャップ。クールな容貌とは違い、雪は元気すぎるのだ。

そしてそれを意識したのは少し前の過去にあるのだが、この容姿と中身があっていないという事は、それより昔から薄々感ずいてはいた。


(それなのになんであんな風に喋っちゃったんだろ……)


雪にとってはそれが不思議でならなかった。

家族に素以外で接したのは久しぶりだが、あの男の子とも普通に喋れたのだ。

これは大事件である。

周りから見たらきっとあの時の自分は、違和感の塊だっただろう。

そう思うと、顔が林檎のように真っ赤になる。

「あぁぁぁっ、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいっ!!……うぅ」

言ってみたものの、恥ずかしくなくなる訳ではない。

頭を冷やす為に水面台に向かう事にし、ベッドから立ち上がる。

部屋の鏡を見ると、その顔はやはり真っ赤で、雪はこの状態が嫌で堪らなかった。


そして、なんだかんだで頭を冷やし終えると、小腹が空きお腹が鳴る。

すぐに周りを確認し、誰もいないことに安堵する。

母親は外出中、姉は自室で何かをしているようだ。

雪見家は母、姉、雪の三人家族で雪は母と姉の弄られの的なのだ。

聞かれていようものなら、きっと弄りまくられていたに違いない。

冷蔵庫前に到着し、中に何か食べれるもの又は使えるものがないかを探す。

「うっ……パンの耳くらいしかない」

むしろ何故パンの耳があったのか分からないが、雪はパンの耳を食べ始める。

「せめて料理が出来ればアレンジとか出来るんだろうけど……はぁ」

大きな溜息を吐き残りのパンの耳を完食する。

だが、食べ終わった事によりする事がなくなってしまった。

しばらくはそのまま椅子にダレているが、学校で独りでそんな状態なのを思い出しやめる。

そして何を思ったのか、雪は急に自室に戻り制服を脱ぐ。

そしてタンスから着替えを出し、着々と着替えを進めていく。

家に居るから退屈なのだ。

「退屈なら楽しい事探せばいいんだよ……!!」


外に飛び出し数分が経過した。

白色のマフラーに、赤いコートを羽織った少女――つまり雪は道に迷ってしまった。

「知らない方に来るんじゃなかった……うぅ、寒い」

見知らぬ地で迷い、今はやんでいるが雪が降っていた程の寒さである。

防寒対策はしてきたものの、完璧に温かくする事なんて不可能だ。

途方に暮れながら、しばらく放浪してみる。

遭難した場合は動かない方がいいと、言われるがこれは迷子である。

もしかしたら知ってる道に出れるかもしれない、そう思っての行動だった。


どれくらい歩いただろう?

それすら分からなくなり、日も暮れ始め世界を赤く染めていた。

その景色は美しく見蕩れてしまう。

そのまま景色を眺めていると、道の隅に何かを見つける。

茶色の箱の中、その生き物は小さな耳を動かし、つぶらな瞳でこちらを眺めてくる。

「捨て猫かな?可愛い……」

まだ随分小さい猫が一匹、捨てられていたのだ。

「触っても大丈夫だよね……」

誰に確認したのか分からないが、独り呟き子猫に手を伸ばし撫でる。

子猫は気持ちよさそうに目を細め、喉をゴロゴロ鳴らす。

その可愛さにやられたのだろう。

雪はダンボールを抱え家に帰る事を決心したのだった。


そして暗くなる少し前。

なんとか家に到着する雪。途中たまたま見つけたカフェで休憩した際に、道を聞いたのが良かったのだろう。

その見るからに優しそうな店主は、嫌がることなく詳しいところまでメモに書き、それを雪に渡したのだ。

しかも、店主はたわいない雑談にも、付き合ってくれて随分仲良くなれた。

だが、気付くと長居する訳にもいかない時間になっていて、ゆきはその独特な喋り方をするその店主に感謝し店を出たのだ。

そしてメモ通りに進み、今のこの状態に至る。

勿論猫も一緒に連れてきていた。動物好きの母と姉の事だ。断りはしないだろう。

雪は出かける前に悩んでいた事をすっかり忘れ、楽しい時間を過ごしたのだった。


――完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ