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華麗なる獣の復讐も兼ねた傍観生活  作者: 森坂草葉
10月の復讐は白狼と共に
8/30

vengeance:target×××00

復讐劇の幕を挙げました。

本日はプロローグまでです。

 




 なんで、って、疑問に思った。

 なんで、どうして私なんだろうって、そう考えて、悩んで、泣いた。

 あそこで死んだことも悔しかった。

 でも一番悔しかったのは、人間じゃなかったこと。

 人間のほうがマシだった。人間だった伝えられた。

 でも今は何も伝えることはできない。

 短い前足を伸ばしたって、好きな人を抱きしめることもできない。

 どう鳴いたって、好きな人に気持ちを伝えることはできない。

 いくら追いかけたって、隣に並び立つことはできない。

 悔しいよ。凄く悔しい。

 あそこで死んで、後悔だったり未練がないなんて嘘にだ。

 未練はある。後悔もある。だからこそ、復讐する。

 こっそりと、ちいさく、ささやかで、あとからじわじわとあがっていくような、そんな復讐を。

 さぁ、始めようか。



 ゆっくりと、四足の足を器用に使って歩く。

 最初はうまく歩けなかったけど、今じゃ随分と手馴れた。

 ふさふさの芝生の上を、軽やかなリズムで歩きぬける。

 季節は秋に変わり、木の葉は綺麗な紅色に化粧を施され、花も季節によって姿を変えた。

 高々に聳え立つ木を見た。

 今の姿では、遙か遠い。


 自慢の真っ白な毛並みをなびかせて、目的の地まであとわずか。

 今はとても気分がいい。

 だから調子に乗って鼻歌を歌う。調子っぱずれな鼻歌は学園長の真似。

 わいわいと騒ぐ音が耳に届く。白狼は耳が良いんだ。

 足取りが自然と早くなる。

 ああ、もう少し。

 そう、もう少し。



「愛美、好きだよ」

「愛美、好きだ」

「愛美、君を好いている」

「愛美、貴方が好きです」

「愛美、好きなんだ」

「愛美、すき、すきだってば」


「そんな、みんなありがとう。でもあたし、あたしっ!」



 誰かの幸福の裏でひっそりと涙を流している人。

 誰かの喜びの裏に悲しみを纏った人。

 たとえば、いますすり泣く女生徒のように、涙を流しているんだ。

 悔しさと、不甲斐なさと、どうすることもできない自分に、泣いているんだ。

 私だって、鳴いた。泣いた。ないた。

 枯れるほどないて、もう出なくなった。

 残ったのは、堪えようもない深い悲しみと怒り。

 そして、復讐心。

 だから、ねぇ。

 幕を開けよう。復讐劇の、幕を。



「ワォォオーンっ!!」



 どこかで何かの遠吠えが聞こえた気がした。

 空は、嫌味なほど晴れた青空。


 

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