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日々は何も変わらず過ぎていき、吉埜達は中学の卒業シーズンを迎えていた。
3年になっても吉埜と古賀は同じクラスで、朋晴は隣のクラス。
その為、吉埜と古賀はだいぶ親しくなっていた。…と言っても、古賀の性格は相変わらずで、吉埜相手に緊張する事はなくなっていても、どこか恥ずかしそうにしている部分は健在だ。
ただ、吉埜は気付いていた。3年の秋を過ぎたころから、少しずつ古賀の体型が変わってきていた事に…。
「もうすぐ卒業か…」
「うん」
「過ぎちゃえばアッという間だったよな」
「そうだね」
数日後に卒業式を控え、午前中にリハーサルをやるという事で登校日になった今日。
そのリハーサルも終わってしまえばみんな早々と帰ってしまい、昼を過ぎた今、教室に残っているのは吉埜と古賀だけになっていた。
後輩の女子に引きずられてどこかへ拉致られてしまった朋晴を待っている吉埜は、一緒に待ってくれている古賀と二人並んで窓際でボーっとしていた。
窓の桟に座っている吉埜は、隣に立っている古賀に視線を向ける事なく、青い青い空を眺めて思い出を噛みしめるように呟く。
吉埜は気が付いていなかったが、古賀はそんな吉埜をずっと見つめていた。
陽に透ける茶色い髪と、人形のように白い肌。そして、眩しいのか僅かに細められた両目。
大勢でいる時にはあまり見せない物静かな吉埜の姿に、古賀は静かに見惚れていた。
「…お前さ…」
「…え?」
そんな吉埜が突然振り向いた事で思いっきり目が合ってしまった古賀は、見つめていたのがバレてしまったかとアタフタしてしまったが、吉埜は視線にまったく気づいておらず、「なに慌ててんだよ」と可笑しそうに笑っただけ。
ホッと安堵に脱力している古賀を見て、吉埜は改めて口を開いた。
「お前、最近体重計乗った?鏡見てる?」
「…体重計?…鏡?」
途端に不安そうになった古賀を見て、吉埜は言葉が足りなかった事に気が付いた。
「いや、そういう意味じゃないから、そんな泣きそうな顔するなよ」
古賀は、悪い方の意味で言葉を捉えてしまったらしく、吉埜はすぐにそれを否定した。
「お前さ、だんだん痩せてきてるって気付いてる?」
「………え?」
どうやら全く気付いていなかったらしい。
古賀は、呆気にとられた顔で吉埜の顔を凝視した。
そのポカンとした珍しい表情に、吉埜は抑える事なく笑いだす。
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