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何故か勝手に話が転がり落ちていく古賀に、吉埜は思いっきり溜息を吐いた。

すると、目の前に立つ身体が大きく震える。


「…ごめん」


泣きそうな声と共に立ち去ろうとする古賀の腕を、遠慮なくガシっと掴んだ。


立ち上がった吉埜は小柄で華奢。どう見ても古賀の方が大きいのに、存在感の大きさは比べるまでもない。


「なに勝手に話進めてんだよ」

「ゴ、ゴメ、」

「迷惑だなんて言ってないし思ってない」

「…ン。…………え?」


萎縮していた古賀は、吉埜の言葉にキョトンと目を見開いた。


「腹へってたからめちゃくちゃ嬉しいんだけど」


満面の笑みを浮かべて、古賀の手から細長いパイを貰い受けた。

甘い物が好きな吉埜は、お世辞などではなく本気で喜び、パイを見たままニコニコしている。

それを真正面から見た古賀は、吉埜の無邪気な可愛らしさに思わず顔をほころばせた。


その時。


「吉埜。帰ろうぜ」


教室の入り口からかけられた声が、2人の間にあったホワホワとした空気に爽やかな風を運び込んだ。


「朋晴!」


ドアの所から顔を覗かせたのは、隣のクラスの三井朋晴みつい ともはる


165の吉埜と178の古賀の中間くらいの身長、運動が得意な為かヒョロイ印象は与えず、切れ長二重の目は涼しげでとにかくモテる。

さらっさらの茶髪が、真面目さを掻き消して親しみやすい。


性格も社交的で男らしく、頼りになる存在として二年生の中でも頭角を表している人物。

そして、吉埜の家の隣に住む幼馴染だ。


2人とも部活に入っていない為、朝晩の登下校はいつも一緒。

今日も吉埜を迎えにきたところだった。


「あれ?話し中だった?」

「いや、大丈夫。じゃあまた明日な、古賀」

「あ、う、うん。またね」


吉埜は、最後にもう一度パイの礼を言ってからドアへ向かい、朋晴と並んで歩き出した。


そんな2人の後ろ姿を見つめる古賀の瞳はどこか寂しそうでもあり、そして、諦めのような色を宿していた。







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