3
いつも行き当たりばったりで行動してしまう吉埜は、今日もまた自分の行動に激しく後悔を覚えた。
「悪い。俺が勝手に連れて来ちゃったからだよな」
「…僕、お昼はあまり食べないから…、大丈夫」
恥ずかしそうに微笑む古賀は、大きな外見とは裏腹に物凄く穏やかだ。
なんだか気性の大人しい大型犬を見ているような気持ちになる。
「お前のその体格で昼食べないわけないだろ。後で絶対腹減るから、これ食べとけよ」
けっこう失礼な事を言っている吉埜だが、てらいの無さに嫌味をまったく感じさせず、逆にこのあっけらかんとした物言いが、吉埜の裏表の無い性格を表していた。
白いビニール袋の中から買ったパンを4個取り出して、「どれがいい?」と古賀に差し出すと、最初は首がもげるんじゃないかと心配になるくらい顔を左右に振っていたが、引っ込めない吉埜の様子に諦めたのか、小さな声で「コロッケパンを」と呟いた。
「よしよし、じゃあ、コロッケパンとジャムパンは古賀の分ね。俺は、カツサンドとクリームパン」
コロッケパンと一緒にジャムパンを手渡したら、古賀はあわあわと挙動不審になりながらも、「ありがとう」と言って、またも顔を真っ赤に染め上げて受け取った。
その後は特に話す事もなく、2人で黙々とパンを食べた。
静かな空気は沈黙とも違い、ただ穏やかに時が流れる。
吉埜は、こんな心安らぐ時間を過ごせるのは、古賀の持っている柔らかな雰囲気のおかげだと知っている。
…何故みんなにこの古賀の良さが伝わらないのか…
もどかしさと共に、どうにもできないモヤモヤ感を噛みしめた。
放課後。
学校指定の通学鞄に課題のプリントをしまっていると、机の上に影が差した。
「…?…古賀」
顔を上げると、恥ずかしそうな表情を浮かべた古賀が立っているではないか。
自分から近づいてくるなんて滅多に無いのに、どういう風の吹き回しだろう。
珍しいな…、と古賀を見つめると、その顔はやはり毎回の如く真っ赤に染まる。
「…あ、あの…、渡来君、…これ…」
はにかみながら、おずおずと目の前に差し出されたそれは、美味しそうなクリームパイで…。
「………?」
意味がわからない吉埜は、クリームパイと古賀を交互に見てから首を傾げた。
「お…お昼に、パンもらったから、これ、お礼に…。あの、でも、迷惑だったら捨ててくれて構わないから。…あの…、ごめん…、やっぱり、こんなのいらないよね?」
活動報告に、頂いたコメントへのお返事を書いていこうと思います。
【活動報告の場所は、小説表紙ページにある私の名前から私のプロフページ(?)に飛ぶと、見ることができると思います(^^)】