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吉埜にしてみれば、親しくなるのに外見など関係なく、それよりも中身の方が大切だと思っている。


身なりに気を使ってそれなりにモテている目の前の先輩達よりも、外見はどうであれ、優しい心根を持っている古賀の方が断然好きだ。というより比べる事すら出来ない。


「他の奴は他の奴、古賀は古賀。それぞれで仲良くしてんだからいいの。って事で、俺いまからコイツと昼飯食べに行くんだから連れて行きますよ。じゃ」


ボーっとしている古賀の腕を掴んで先輩達に手を振り、強引にその場から歩き出した。


向かう先は、当初の予定通り屋上。


この学校の屋上は何故か人気ひとけが無く、昼休みになっても誰も来ない。それを良い事に、いつも吉埜はここで気楽に休み時間を過ごしている。


そんな屋上は、やっぱり今日も誰もいなかった。


立ち止まって吹き抜ける風の心地良さに目を細めていると、何やら斜め後ろから心細そうな声が聞こえてきた。


「あ、あの、渡来君」

「ん?なに?」


振り向けば、困ったようにしどろもどろしている古賀の姿が…。


吉埜と目が合うと、途端に顔を真っ赤に染めあげた。


中2男子なのに、恥ずかしがり屋にも程がある。


男同士でこれなら、女子と目を合わせる事なんて絶対に出来ないだろう。


「あの、あの、手を…」

「…手?」


手がどうした…、と疑問に思った吉埜だったが、前髪の奥にある古賀の目が、いまだに繋がれたままの自分達の手を凝視している事に気がついて、ようやく意味がわかった。


吉埜はすっかり忘れていたが、あれからずっと古賀の手を握ったままだったのだ。


「悪い。お前の手握ってんの忘れてた」


男子中学生が2人で手を握って歩く姿は、なんとも言えず滑稽だった事だろう。


自分はあまり気にしないけれど、古賀の性格では恥ずかしい事この上ない状態だったに違いない。


申し訳なくなって急いで手を離し、フェンスの方へと向かう。後ろで戸惑っている気配を感じたから、途中、振り返って呼び寄せた。


もうすぐ冬が訪れるだろう秋の深いこの時期、日中で太陽の光が差していても暑さはない。それどころか、陽射しがポカポカと暖かく感じるくらいだ。


片膝を立てて座りながら背後のフェンスにカシャリと寄り掛かり、後を着いてきていた古賀にも横に座るよう告げた。


そこでようやく気がついた。


「あ…、もしかして古賀、昼飯まだ?」


手ぶら状態の古賀を見れば当然の如く、戸惑った様子で頷かれる。







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